アレイの属性

非分散アレイの主要な属性の 1 つは、アレイ内の一部のドライブが「スペア・ドライブ」に指定されることです。非分散アレイ構成では、スペア・ドライブはアレイ内の他のドライブに障害が起きたときにのみ使用されます。

1 つの非分散アレイには 2 個から 16 個のドライブを格納できます。いくつかのアレイによって 1 つのプールの容量が作成されます。冗長性のために、他のドライブに障害が起きた場合に読み取り/書き込み操作を引き継げるように、スペア・ドライブ (「ホット・スペア」) が割り振られます。障害の発生時以外の時間は、スペア・ドライブはアイドル状態であり、システムに対する要求を処理していません。アレイ内のメンバー・ドライブに障害が起きた場合、スペアへのデータのリカバリーは、そのドライブがデータを書き込める速度でしか行えません。このボトルネックにより、システムはホストのためと再作成のためのワークロードのバランスを取ろうとするため、データの再作成に何時間もかかることがあります。その結果、残りのメンバー・ドライブへの負荷が相当に大きくなります。この間ずっと、再作成中のアレイへの入出力待ち時間が影響を受けます。ボリューム・データは、MDisk 全体にストライピングされているため、ドライブの再作成にかかる時間の間、すべてのボリュームが影響を受けます。

アレイの例

図 1 に、RAID レベル 6 で構成されたアレイの例を示します。このアレイには、5 つのアクティブ・ドライブと 2 つのスペア・ドライブが含まれています。
  •  1  アクティブ・ドライブ
  •  2  スペア・ドライブ (両方のドライブが非アクティブです)
  •  3  データのストライプ
  •  4  ストライプ幅 (アレイ幅と等しく、アクティブ・ドライブのみがストライプ幅に含まれます)
図 1. 非分散アレイ (RAID 6 レベル)
この図は、RAID 6 レベル構成の非分散アレイの例を示しています。すべてのドライブがアクティブです。
図 2 は、障害ドライブを含むアレイを示しています。データは、残りのすべてのアクティブ・ドライブから読み取られます。リカバリーされたすべてのデータは、スペア・ドライブの 1 つに書き込まれます。このプロセス中、その他のスペア・ドライブは未使用でアイドル状態のままになります。
  •  1  障害ドライブ
  •  2  残りのアクティブ・ドライブ (リカバリーされたデータが読み取られます)
  •  3  リカバリーされたデータは 1 つのスペア・ドライブに書き込まれます
  •  4  残りのスペア・ドライブは未使用でアイドル状態のままになります
図 2. 障害ドライブのある非分散アレイ (RAID 6 レベル)
この図は、RAID 6 レベル構成の非分散アレイの例を示しています。1 つのドライブで障害が起きています。

サポートされる RAID レベル

システムは、RAID レベルの RAID 0、RAID 1、RAID 5、RAID 6、および RAID 10 をサポートします。

RAID 0
RAID 0 アレイには冗長性がなく、また、ホット・スペアによるテークオーバーをサポートしていません。
RAID 1
RAID 1 はディスクのミラーリングを提供し、これによって、2 つのドライブ間でデータが重複されます。 RAID 1 アレイは、2 メンバーからなる RAID 10 アレイと内部的に同等です。
RAID 5
RAID 5 アレイは、各ストライプ上の 1 個のパリティー・ストリップを使用して、メンバー・ドライブにデータをストライピングします。RAID 5 アレイは RAID 10 アレイより高度なシン・プロビジョニングによる単一冗長性を備えていますが、パフォーマンスはいくらか劣ります。 RAID 5 アレイは、1 つのメンバー・ドライブの障害に耐えることができます。
RAID 6
RAID 6 アレイは、各ストライプ上の 2 個のパリティー・ストリップを使用して、メンバー・ドライブにデータをストライピングします。RAID 6 アレイは、2 つのメンバー・ドライブで同時に障害が発生しても許容できます。
RAID 10
RAID 10 アレイは、ドライブのミラーリングされたペアにデータをストライピングします。 RAID 10 アレイには単一冗長度があります。 ミラーリングされたペアは、独立に再ビルドします。各ペアからの 1 つのメンバーで、再作成と欠落が同時に起こることが可能です。 RAID 10 は、RAID 0 と RAID 1 を結合した機能です。

表 1 に、RAID レベルの特性の比較があります。

表 1. RAID レベルの比較
レベル ドライブの数 (DC)1 アレイの容量 (概算) 冗長性2
RAID 0 1 - 8 DC * DS3 なし
RAID 1 2 DS 1
RAID 5 3 - 16 (DC - 1) * DS 1
RAID 6 5 - 16 (DC - 2) * DS より小 2
RAID 10 2 - 16、偶数 (DC/2) * DS 14
  1. 管理 GUI で、すべてのサイズのアレイを作成できるわけではありません。サイズは、ドライブの構成方法によって異なるからです。
  2. 冗長性は、アレイが許容できる、障害が起きたドライブの数を意味します。 ある環境では、アレイは、複数のドライブの障害を許容できます。詳しくは、ドライブの障害と冗長性を参照してください。
  3. DS はドライブのサイズを意味します。
  4. 1 と MC/2 の間です。

アレイの初期設定

アレイが作成されると、 バックグラウンドの初期設定プロセスによって、アレイ・メンバーが互いに同期化されます。 このプロセスの実行中は、アレイは入出力に使用できます。初期設定は、メンバー・ドライブの障害による可用性に影響を与えません。

ドライブの障害と冗長性

必要な冗長性がアレイにある場合は、 ドライブに障害が起こるかドライブへのアクセスができなくなった場合、ドライブはアレイから取り外されます。 適切なスペア・ドライブが使用可能な場合、このドライブはアレイ内に取り入れられ、次に同期化が開始されます。

各アレイには、それぞれのアレイ・メンバーの優先位置とパフォーマンスを記述した一連の目標があります。 ドライブに障害が発生すると、ドライブの障害とホット・スペアのテークオーバーが連続して起こることで、アレイのバランスが取れなくなることがあります。つまり、目標が一致しないメンバーがアレイに生じます。適切なドライブが使用可能になると、システムは、自動的にそのようなアレイのバランスを取り直します。

バランスの取り直しは、並行交換 (冗長性に影響を与えずにドライブ間でデータを移行させる) を使用することによって実現できます。

ユーザーは手動で交換を開始することができ、アレイの目標を更新することで構成変更を容易にすることも可能です。

スペア・ドライブの保護と目標

各アレイ・メンバーは、有効に一致する 1 組のスペア・ドライブによって保護されています。 これらのスペア・ドライブの一部は、他のスペア・ドライブより適しています。 例えば、一部のスペア・ドライブは、アレイのパフォーマンス、可用性、あるいはその両方を低下させる可能性があります。 良好なスペア・ドライブには、以下のいずれかの特性があります。
  • メンバーの目標容量、パフォーマンス、およびロケーションに完全に一致する。
  • パフォーマンスの一致。スペア・ドライブの容量およびパフォーマンスが同等以上である。
良好なスペア・ドライブは、以下のいずれかの特性も備えています。
  • ドライブの用途が「スペア」である。
  • 交換が完了したときにホット・スペア・ドライブになる、並行交換の古いドライブ。

アレイ・コマンドには spare_protectionと呼ばれる属性があり、この属性を使用して、アレイ・メンバーの良好なスペアの数を指定することができます。 アレイ属性 spare_protection_min は、アレイのメンバーの最小スペア保護です。

アレイ属性 spare_goal は、各アレイ・メンバーを保護するのに必要となる良好なスペア・ドライブの数です。この属性は、アレイの作成時に設定され、charray コマンドを使用して変更することができます。

アレイ・メンバーを保護している良好なスペア・ドライブの数がアレイのスペア目標未満である場合、イベント・エラー 084300 を受け取ります。

低速書き込み優先順位の設定

冗長アレイ・レベルが読み取り/書き込み入出力操作を実行している場合、アレイのパフォーマンスは最も低速のメンバー・ドライブによって束縛されます。ドライブが内部 ERP プロセスを実行する場合、SAS ネットワークが不安定であるか、アレイに駆動されている作業が多すぎると、メンバー・ドライブのパフォーマンスが通常より著しく悪くなることがあります。 このような状況では、冗長度を提供するアレイが短い割り込みを受け入れて、低速コンポーネントへの書き込みや低速コンポーネントからの読み取りを回避することができます。パフォーマンスの悪いドライブにマップされている書き込みは、他のコピーまたはパリティーにコミットされ、その後、良好な状況で (他の障害がない場合) 完了します。メンバー・ドライブがリカバリーすると、メンバーが低速だった間に非同期としてマークされたストリップを書きこむバックグラウンド・プロセスによって、冗長性が復元されます。

この技法はアレイの slow_write_priority 属性の設定によって制御され、この属性のデフォルトは latency です。latency に設定されていると、アレイは低いメンバー・パフォーマンスの平滑化を試みるために非同期になることを許されます。charray コマンドを使用して、slow_write_priority 属性を redundancy に変更することができます。redundancy に設定された場合、アレイは非同期になることを許されません。ただし、アレイは、冗長なパスから低速のコンポーネントに読み取りを返すことによって、読み取りパフォーマンスの低下を回避することができます。

アレイが latency モードを使用するか、redundancy モードでコンポーネントの読み取りを回避しようとする場合、システムはドライブを定期的に評価して、ドライブが再びシステムの信頼できる部分になったかどうかを判断します。ドライブが良好なパフォーマンスを示さない場合、またはアレイ内でパフォーマンス障害を起こす頻度が多すぎる場合、システムはパフォーマンスの低いドライブの露出が続かないように、そのハードウェアを停止させます。システムがハードウェアを停止させるのは、ドライブのパフォーマンスが低下した別の説明を見つけられない場合のみです。

ドライブのオフラインでの差分再作成

内部 RAID アレイでドライブがオフラインになると、システムはホット・スペア・テークオーバーの実行を回避しようとします。60 秒間にわたり、ドライブは、新規の書き込みが行われた場所にマークを付けます。ドライブがオンラインとして再表示されると、完全なコンポーネントの再作成を行わずに、書き込みがあった場所の「差分再作成」を完了します。スペア・テークオーバーの回避は最高のシステム可用性を維持するために望ましいため、この技法はアレイの slow_write_priority の設定とは無関係に使用されます。

ドライブの交換

障害 LED が点灯しているドライブは、障害のマークが付けられて、システムで使用されなくなっていることを示します。システムは、障害ドライブが交換されたことを検出すると、交換用ドライブをスペア・ドライブとして再構成します。交換された障害ドライブは、構成から自動的に除去されます。その後は、システムのアレイ・メンバーシップ目標の達成に、この新しいスペア・ドライブが使用されるようになります。