ミラーリングされたボリューム
ボリューム・ミラーリングを使用すると、ボリュームは 2 つの物理コピーを持つことができます。 各ボリューム・コピーは、異なるプールに属することができ、各コピーには、ボリュームと同じ仮想容量があります。管理 GUI では、アスタリスク (*) はミラーリングされたボリュームの 1 次コピーを示します。1 次コピーは、読み取り要求の推奨ボリュームを示します。
ミラーリングされたボリュームにサーバーが書き込む場合、システムはデータを両方のコピーに書き込みます。ミラーリングされたボリュームをサーバーが読み取る 場合、システムは一方のコピーを選択して読み取ります。ミラーリングされたボリューム・コピーの一方が一時的に使用不可になる (例えば、プールを提供するストレージ・システムが使用不可のため) 場合であっても、サーバーは引き続きボリュームにアクセス可能です。システムは、ボリュームのどの領域が書き込まれているかを記憶し、両方のコピーが使用可能であるときはこれらの領域を再同期します。
1 つまたは 2 つのコピーを持つボリュームを作成し、コピーを追加することによって、ミラーリングされていないボリュームをミラーリングされたボリュームに変換できます。 この方法でコピーを追加した場合、システムは新規コピーを同期化して、既存のボリュームと同じになるようにします。 サーバーは、この同期化処理中にもボリュームにアクセス可能です。
ミラーリング・ボリュームを非ミラーリング・ボリュームに変換できます。これを行うには、一方のコピーを削除するか、または一方のコピーを分割して、非ミラーリングの新規ボリュームを作成します。
ボリューム・コピーは、イメージ、ストライプ、または順次のどのタイプにすることもできます。ボリューム・コピーは、シン・プロビジョニング、完全割り振り、または圧縮の任意のタイプの容量節約を使用することもできます。2 つのコピーは、異なるタイプで構いません。
ボリューム・ミラーが同期されると、ミラー・コピーがオフラインになって書き込み入出力要求を進行する必要が生じた場合、あるいはミラーの高速フェイルオーバーが行われた場合、ミラー・コピーが非同期になる可能性があります。高速フェイルオーバーが行われると、ホスト・システムが、一時的に低速で実行中のミラー・コピーから分離されます。これにより、冗長性が短期間中断され、システムに影響が及びます。
書き込み高速フェイルオーバー
書き込み高速フェイルオーバーでは、ホスト書き込み入出力の処理中に、システムは両方のコピーに対して (10 秒のタイムアウト値で) 書き込みを実行依頼します。1 つの書き込みが成功し、もう 1 つの書き込みが10 秒より長くかかった場合、速度が遅い方の要求がタイムアウトし、異常終了します。低速コピー入出力の終了シーケンスの期間は、 ミラー・コピーが構成されたバックエンドに依存します。例えば、入出力がファイバー・チャネル・ネットワーク全体に発生する場合、入出力終了シーケンスは、通常、10 秒から 20 秒で完了します。ただし、まれに、シーケンスが完了するのに 20 秒より長くかかることがあります。入出力終了シーケンスが 完了すると、ボリューム・ミラー構成は更新され、低速コピーが同期しなくなったことを記録します。構成の更新が完了すると、 ホスト・システム上で書き込み入出力が完了します。
ボリューム・ミラーは、4 分から 6 分の間、低速コピーの使用を停止します。後続の入出力要求は、残りの同期コピーによって実行されます。 この期間中、同期は中断されます。さらに、ボリュームの同期の進行状況は 100% 未満で示され、ボリュームが追加のホスト書き込みを受け取ると、減少します。コピーの中断が完了すると、ボリューム・ミラーリング同期が再開され、 低速コピーの同期化が開始されます。
別の入出力要求が同期中に非同期コピーでタイムアウトになると、ボリューム・ミラーリングは 再び 4 分から 6 分の間、そのコピーの使用を停止します。コピーが常に低速である場合、ボリューム・ミラーリングでは 4 分から 6 分ごとにコピーの同期が再試行され、別の入出力タイムアウトが発生します。そのコピーは次の 4 分から 6 分の期間中は使用されず、次第に非同期になります。ボリュームの書き込み済み領域が増えるにつれて、同期の進行状況のパーセントは徐々に小さくなります。
書き込み高速フェイルオーバーが定期的に行われると、非同期になったミラー・コピーの入出力データを処理するストレージ・システム内で潜在的なパフォーマンス上の問題が生じる可能性があります。 ストレージ・システムのパフォーマンスが低下したために 1 つのコピーが低速になると、さまざまなボリュームが影響を受けます。コピーは、1 つ以上のストレージ・システムに関連付けられたストレージ・プールから構成される可能性があります。この状況は、過負荷またはその他のバックエンドのパフォーマンス上の問題の可能性を示します。
mkvdisk コマンドを発行して新規ボリュームを作成する場合、mirror_write_priority パラメーターはデフォルトで latency に設定されます。高速フェイルオーバーは有効になっています。ただし、高速フェイルオーバーは chvdisk コマンドの mirror_write_priority パラメーターの値を変更することで制御が可能です。mirror_write_priority を redundancy に設定すると、高速フェイルオーバーは無効になります。システムは、ミラーリングされたすべての書き込み入出力に対して、完全な SCSI イニシエーター層のエラー・リカバリー手順 (ERP) を適用します。いずれかのコピーが低速な場合、ERP は最大 5 分かかる可能性があります。 書き込み操作がまだ正常に完了していない場合、コピーはオフラインにされます。冗長性を保持するか、(一時的に冗長性を失うことを犠牲にして) 高速フェイルオーバーとホスト応答時間を重要視するかを慎重に検討してください。
読み取り高速フェイルオーバー
高速読み取りフェイルオーバーは、システムがどのように読み取り入出力要求を処理するかに影響します。高速読み取りフェイルオーバーによって、読み取り操作でシステムが最初に試行するボリュームのコピーが決まります。 1 次読み取りコピー は、読み取り入出力でシステムが最初に試行するコピーです。これは、ユーザーが関係している読み取りアルゴリズムによって決まります。
システムは、ホストの読み取り入出力要求を一方のボリュームのコピーに対してのみ実行依頼します。その要求が正常に完了した場合、システムはデータを返します。 要求が正常に完了しない場合、システムは他方のコピー・ボリュームに対して要求を再試行します。
高速読み取りフェイルオーバーでは、1 次読み取りコピーで読み取り入出力の速度が低下すると、システムは他方のコピーにフェイルオーバーします。 これは、その後の 4 から 6 分間は、システムが最初に他方のコピーで読み取り入出力を試行することを意味します。 その後、システムは、元の 1 次読み取りコピーの読み取りに戻ります。 この期間中に、他方のコピーに対する読み取り入出力も速度が低下した場合は、システムは即時に元に戻します。 また、1 次読み取りコピーが変更された場合も、システムは元に戻し、新規の 1 次読み取りコピーを試行します。 これは、システム・トポロジーが変更された場合や、1 次コピーまたはローカル・コピーが変更された場合に発生する可能性があります。 例えば、標準トポロジーでは、通常、システムは最初に 1 次コピーの読み取りを試行します。 高速読み取りフェイルオーバーの期間中にボリュームの 1 次コピーを変更した場合、システムは、新規に設定された 1 次コピーの読み取りに即時に戻ります。
高速読み取りフェイルオーバー機能は、システムで常に有効にされています。この処理中に、システムがボリュームを停止したり、コピーが非同期になったりすることはありません。
ストレージ・システム保守中のミラーリングされたボリュームのデータ保全性の維持
ボリューム・ミラーリングは、バックエンド・ストレージ・システムの 1 つで障害が発生した場合でもホストがボリュームに対して入出力を続行できるようにすることにより、データの可用性を高めます。 ただし、このことがデータ保全性に影響することはありません。バックエンド・ストレージ・システムのいずれかがデータを破損した場合、ホストは、その他のボリュームに対するのと同じ方法でその破損したデータを読み取る危険性があります。そのため、1 つのコピーのデータ保全性に影響する可能性のある保守をストレージ・システムで実行する前に、両方のボリューム・コピーが同期していることを確認することが重要です。次に、そのボリューム・コピーを削除してから、保守を開始してください。 例えば、ストレージ・システムが提供しているディスク上のデータをゼロにする必要がある場合などに、このシナリオが該当します。