オブジェクト・リクエスト・ブローカーの管理

このセクションでは、IBM WebSphere InterChange Server とそのいくつかのコンポーネントとの通信を処理する IBM Java オブジェクト・リクエスト・ブローカー (ORB) に関する問題の解決について説明します。このセクションの内容は次のとおりです。

オブジェクト・リクエスト・ブローカーのインストール

IBM WebSphere InterChange Server では、そのコンポーネント (アダプターや System Manager など) のいくつかと通信を行う IBM Java ORB が必要です。ORB を使用するには、IBM Java ORB をインストールする必要があります。

IBM Java ORB は、IBM WebSphere InterChange Server インストーラーが自動的にインストールする IBM Java ランタイム環境 (JRE) ソフトウェアの一部としてインストールされます。

オブジェクト・リクエスト・ブローカーのカスタマイズ手順

オブジェクト・リクエスト・ブローカーをカスタマイズするには、以下のステップを実行します。

  1. IBM Java ORB がその動作をカスタマイズするためにサポートしているプロパティーについては、表 24 を参照してください。
  2. コンポーネントの始動スクリプトで、IBM ORB プロパティーとその値をコマンド行オプションとして指定します。コマンド行で IBM ORB プロパティーを指定すると、始動しているコンポーネントに対してのみプロパティーが変更されます。ORB プロパティーを指定するには、その前に -D コマンド行オプションを付加します。コマンド行で指定したプロパティーは、システムまたは CWSharedEnv ファイルのその他のプロパティー設定を すべてオーバーライドします。
  3. CWSharedEnv ファイルで該当する変数を編集します。CWSharedEnv ファイルで変数を変更すると、始動プロセスでこのファイルを読み取る すべての コンポーネントの変数が変更されます。これらのコンポーネントには、アダプター、IBM WebSphere InterChange Server インスタンス、repos_copy ユーティリティー、IBM WebSphere InterChange Server ツールが含まれます。
    注:
    CWSharedEnv ファイルの詳細については、ランタイム・プロパティーの管理を参照してください。

    表 24 に示されているように、ORB のロケーション は、CWSharedEnv ファイルの特殊変数によって指定されます。このロケーションを変更するには、CWSharedEnv ファイルでこれらの変数を変更する必要があります。

    その他の ORB プロパティーは、CWSharedEnv ファイルの ORB_PROPERTY 変数に示されています。この変数では、各 IBM ORB プロパティーの前に -D コマンド行オプションが付加されています。ORB プロパティーを 追加または変更するには、CWSharedEnv ファイルの ORB_PROPERTY 変数で 該当する -D オプションを追加または変更する必要があります。CWSharedEnv ファイルで指定した プロパティーは、構成ファイルのその他の設定をすべてオーバーライドします。

  4. 該当する構成 (.cfg) ファイルで構成パラメーター (存在する場合) を指定します。構成ファイルの CORBA セクションの構成パラメーターを使用して、ORB プロパティーの多くを設定することができます。CORBA セクションは、IBM WebSphere InterChange Server 構成ファイル (InterchangeSystem.cfg) にもアダプター・ローカル構成ファイルにも含まれます。CORBA 構成ファイルで構成パラメーターを指定すると、ORB サーバーが実行するすべての ORB 関連タスクの パラメーターが変更されます。
    要確認:
    構成ファイルは XML 形式です。XML エディターを使用していない場合や XML 形式に慣れていない場合は、これらのファイルを変更しないでください

    例えば、スレッドの最大数を指定するには、次のいずれかのアクションを実行します。


表 24. カスタマイズ可能な IBM Java ORB のプロパティー
IBM ORB プロパティー 構成パラメーター 説明
com.ibm.CORBA.ListenerPort OAport ORB サーバー (IBM WebSphere InterChange Server 内) が着信要求を listen するポート番号。
com.ibm.CORBA.LocalHost OAipAddr ORB サーバー (IBM WebSphere InterChange Server 内) が稼働しているマシンの IP アドレスまたはホスト名。
com.ibm.CORBA.ThreadPool. MaximumSize OAthreadMax 接続マネージャーが作成できるスレッドの最大数。デフォルト値 (ゼロ) は、サイズ制限が存在しないことを示します。
com.ibm.CORBA.ThreadPool. InactivityTimeout OAthreadMaxIdle アイドル・スレッドが破棄されるまでの時間 (秒単位)。
com.ibm.CORBA.RequestTimeout なし CORBA 要求がタイムアウトになるまでの秒数。デフォルトでは、タイムアウトはなく、ORB は無期限に応答を待ち続けます。
com.ibm.CORBA.LocateRequest なし Locate Request のタイムアウト値 (秒単位)。
com.ibm.CORBA.FragmentTimeout なし タイムアウトになるまでに ORB が 2 番目以降のメッセージ・フラグメントを待つ最大時間数。タイムアウトを発生させない場合は、このプロパティーにゼロを設定します。デフォルト値は 30000 です。

オブジェクト・リクエスト・ブローカーのロケーションの変更手順

インストール中にオブジェクト・リクエスト・ブローカーのロケーションを変更するには、以下のステップを実行します。

  1. ORB のロケーションに関するデフォルト情報については、表 25 を参照してください。
  2. このデフォルト情報を、インストール中に変更します。IBM WebSphere InterChange Server インストーラーは、「Naming Server」画面で、IBM WebSphere InterChange Server インスタンスの IP アドレスとポート番号の入力を求めます。インストーラーは、製品ディレクトリーの適切な変数にこの情報を保管します。

表 25 に は、ORB ロケーションを指定する CWSharedEnv ファイル内の変数も示されています。

表 25. IBM Java ORB のロケーション
ORB ロケーション IBM ORB プロパティー デフォルト値 CWSharedEnv 変数
IP アドレス org.img.CORBA.ORBInitialHost ローカル・ホストの名前 ORB_HOST
ポート番号 org.omg.CORBA.ORBInitialPort 14500 ORB_PORT

インストールの後に オブジェクト・リクエスト・ブローカーのロケーションを変更するには、以下の手順のいずれかを実行します。

ORB プロパティーの変更方法については、オブジェクト・リクエスト・ブローカーのカスタマイズ手順を参照してください。

IBM Transient Naming Server の使用

IBM Transient Naming Server (tnameserv) は 、IBM WebSphere Business Integration システムにネーミング・サービスを提供します。IBM WebSphere Business Integration システムのコンポーネントは、始動時に IBM Transient Naming Server に登録されます。コンポーネントは、別のビジネス・インテグレーション・システム・コンポーネントにアクセスする必要がある場合に、ネーミング・サービスを使用して、そのコンポーネントの検出とコンポーネントとの対話に必要な情報を判別します。例えば、アダプターは、IBM WebSphere InterChange Server と通信する必要がある場合に 、Transient Naming Server を介して IBM WebSphere InterChange Server のロケーションを取得します。

注:
IBM Transient Naming Server は、IBM Java ORB に組み込まれています。したがって、IBM WebSphere InterChange Server インストール・プロセスの一環として IBM WebSphere InterChange Server マシンに自動的にインストールされます。

登録済みコンポーネントの識別

IBM WebSphere InterChange Server 製品には、現在 IBM Transient Naming Server に登録されている有効な IBM WebSphere InterChange Server ORB オブジェクトをすべて リストする CosNameServer_Dump ツールがあります。このツールは、製品ディレクトリーの bin サブディレクトリーにあります。これは、コマンド CosNameServer_Dump.bat で起動します。

Persistent Naming Server の使用手順

IBM WebSphere Business Integration システムのコンポーネントは、始動時に IBM Transient Naming Server に登録され、その CORBA オブジェクトは Transient Naming Server のメモリーに保管されます。ただし、Transient Naming Server が失敗すると、そのメモリーの内容は失われます。その場合は、そこに登録されたすべてのコンポーネントがネーミング・サービスに登録できるよう、それらをリブートする必要があります。

Persistent Naming Server は IBM ORB Transient Naming Server の機能を拡張し、Transient Naming Server に 登録された CORBA オブジェクトの集合が ネーミング・リポジトリーに保管されるようにします。ネーミング・リポジトリーの存在は、これらの CORBA 参照が、Transient Naming Server メモリー内 にあるだけでなく、永続的であることを示しています。つまり、Transient Naming Server が 失敗した場合に、その他のプロセスや IBM WebSphere InterChange Server コンポーネントで この CORBA 参照を使用することができます。ネーミング・サービスに登録するためにその他のコンポーネントをシャットダウンして再始動する 必要はありません。

ネーミング・リポジトリーのデフォルト・ロケーションは、ローカル・ファイル ProductDir¥CxCosNameRepos.ior です。

ネーミング・リポジトリーのロケーションを変更するには、以下のステップを実行します。

  1. IBM WebSphere InterChange Server 構成ファイル (InterchangeSystem.cfg) を編集します。
  2. CORBA セクションで CosNamingPersistencyFile 構成パラメーターを設定します。デフォルトでは、Persistent Naming Server は使用可能に設定されています。つまり、CORBA オブジェクトへの参照は ネーミング・リポジトリーで維持されます。
  3. ネーミング・サーバーを実行するには、製品ディレクトリーの bin サブディレクトリーにある PersistentNameServer 始動ファイルを使用して、そのネーミング・サーバーを明示的に始動する必要があります。この始動ファイルは次のステップを実行します。

    IBM WebSphere InterChange Server は、始動プロセスの一部として、現在 Transient Naming Server に登録されている CORBA オブジェクトをネーミング・リポジトリー・ファイルにコピーすることによって、ネーミング・リポジトリーを更新します。各アダプターの始動時に、ネーミング・リポジトリーのその情報が更新されます。アダプターの始動時に IBM WebSphere InterChange Server がまだ始動していない場合、ネーミング・リポジトリーは、IBM WebSphere InterChange Server が始動したときに更新されます。

    注:
    Persistent Naming Server が失敗した場合は 、PersistentNameServer 始動スクリプトを使用して再始動できます。ただし、IBM WebSphere InterChange Server や始動済みのアダプターを再始動する必要はありません。

Persistent Naming Server をオフにするには、以下のステップを実行します。

  1. IBM WebSphere InterChange Server 構成ファイル (InterchangeSystem.cfg) を編集します。
  2. (CORBA セクションにある) CosNamingPersistency 構成パラメーターに false を設定します。

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