アップグレードのために ICS システムを準備する際、ICS データベースをマイグレーションする方法として 2 つのオプションがあります。一つは「インプレース・データベース・マイグレーション」で、もう一つは「インプレース・データベース・マイグレーションなし」です。「インプレース・データベース・マイグレーション」は、古いリポジトリーを再利用して、最初に ICS サーバーが始動するときに ICS がリポジトリーをアップグレードするようにする方法です。「インプレース・データベース・マイグレーションなし」は、新しい空のリポジトリー・データベースを使用してアップグレードする方法です。
インプレース・データベース・マイグレーションなしで InterChange Server システムをアップグレードするには、以下の手順が必要です。インプレース・データベース・マイグレーションを使用する場合は、説明中の変更内容が「インプレース・データベース・マイグレーション」として示されます。
InterChange Server システムのバックアップを作成すると、新規バージョンのインストール時に不注意でファイルを上書きしても、そのファイルを回復できます。アップグレード手順を実行する前に、静的データと動的データ (アップグレードにかかわらず定期的にバックアップされる変更可能データ) の両方のバックアップを作成します。静的データおよび動的データの例については、表 15 を参照してください。
システムのバックアップを作成するには、以下の手順を行います。
repos_copy -sWICS -oRepository430.txt -uadmin -pnull
4.1.1 では、repos_copy ユーティリティーは、*.txt ファイルまたは *.in ファイル内のリポジトリー・オブジェクトのバックアップを作成します。
4.2.2 以降のバージョンでは、repos_copy ユーティリティーは、*.jar ファイル内のリポジトリー・オブジェクトのバックアップを作成します。
ProductDir¥mqseries¥crossworlds_mq.tst
IBM では、InterChange Server 製品ディレクトリー全体 のシステム・バックアップをとることをお勧めします。
これは、スキーマ情報、ストアード・プロシージャーを含む完全なバックアップでなければなりません。ICS リポジトリー・データベースだけでなく、その他のデータベースも使用するために InterChange Server システムを構成した場合は、その他のデータベースのバックアップも同様に作成します。
表 15 に、各 ICS
コンポーネントのバックアップ方法の概要を示します。
表 15. InterChange Server データのバックアップ方法
InterChange Server システムをバージョン 4.3 にアップグレードするには、その前にシステムが静止状態であることを確認する必要があります。つまり、環境をバックアップしてアップグレード手順を実行する前に、進行中のイベントをすべて完了し、未確定のトランザクションをすべて解決する必要があります。
以下の手順は、InterChange Server システムを静止状態にする方法について説明します。
実行中のシステムを正常に停止する方法については、「システム管理ガイド」を参照してください。
以下のステップは、サード・パーティー・ソフトウェアの正しいアンインストール順序を示します。
サービスとして稼働している InterChange Server コンポーネントがある場合は、アップグレードを実行する前に そのサービスをアンインストールしてください。新規リリースは別の場所に置かれるため、既存のサービス定義は誤りになります。アップグレードが完了したら、InterChange Server コンポーネントをサービスとして構成する手順について、"拡張構成オプション"を参照してください。
以下のステップは、InterChange Server のコンポーネントの正しいインストール順序を示します。
InterChange Server の前のバージョンからマイグレーションする場合は、データベース・ソフトウェアもアップグレードする必要があるかどうかを確認してください。
サポートされるデータベース・ソフトウェアのリストについては、ソフトウェア要件のセクション (ソフトウェア要件) を参照してください。既存のデータベース・ソフトウェアのバージョンと、製品の 4.3 バージョンがサポートしているバージョンとを照合してください。
データベース・ソフトウェアのアップグレードが必要な場合は、データベース管理者 (DBA) が次の手順に従っていることを確認してください。
データベース・ソフトウェアのバックアップおよびアップグレードを実行する方法の説明については、データベース・サーバーの資料を参照してください。データベースのマイグレーション方法の詳細については、ステップ 8 - リポジトリーのロードに進んでください。
WebSphere MQ をアップグレードする場合は、次のいずれかの方法を採用できます。
WebSphere 5.3 をインストールする場合は、「カスタム」インストールと、Java Messaging を組み込むオプションを選択します。「通常」を選択すると、必要な Java メッセージ・ファイルはインストールされません。詳細な説明については、WebSphere MQ のインストールを参照してください。
詳細な説明については、WebSphere MQ のアップグレードを参照してください。
WebSphere MQ ソフトウェアをアップグレードした後は、InterChange Server とともに使用するために構成する必要があります。詳細については、WebSphere MQ の構成の説明を参照してください。
WebSphere InterChange Server システムが VisiBroker オブジェクト・リクエスト・ブローカー (ORB) を使用して ICS とそのクライアント (コネクター、WebSphere Business Integration ツール、SNMP エージェント、アクセス・クライアントなど) との通信を処理することはなくなりました。代わりに、InterChange Server システムは IBM Java ORB を使用するようになりました。ICS インストーラーは、IBM Java ORB を、Java ランタイム環境 (JRE) の一部として自動的にインストールします。
InterChange Server は、VisiBroker Smart Agent の代わりに IBM Transient Naming Server を使用して、そのネーミング・サービスを提供するようになりました。システムをアップグレードして新しいネーミング・サーバーを使用するには、VisiBroker Smart Agent が IBM Transient Naming Server と同じホスト・マシンにインストールされているかどうか、およびこの同じホスト・マシン上にとどまる必要があるかどうかに応じて、次のいずれかを実行します。
プロパティーを使用して IBM Java ORB をセットアップする処理は、のインストール時に提供される始動スクリプトに設定されています。ただし、InterChange Server の 4.3 以前のバージョンで Inprise VisiBroker ソフトウェアを使用し、VisiBroker ORB プロパティーをカスタマイズしていた場合は、新規スクリプトにも同様の変更を行って、4.3 の IBM ORB へのマイグレーションに適応させる必要が生じる可能性があります。IBM ORB プロパティーとその Visibroker 相当品の詳細については、ORB プロパティーのアップグレードを参照してください。
Visibroker ORB には、ORB を調整するために各種の ORB 関連プロパティーが存在していました。カスタマイズされたスクリプトやソフトウェアでこれらのプロパティーを使用していた場合は、これらのプロパティーが IBM Java ORB に対して適切に設定されていることを確認する必要があります。表 16 には、いくつかの VisiBroker ORB プロパティーと、これに相当する IBM Java ORB での名前を示します。
VisiBroker ORB プロパティーを参照するカスタマイズされたスクリプトが、4.3 以前のインストール・システムに存在する場合は、これらのプロパティーを、後出の表 16 に示す IBM ORB の相当プロパティーに置換してください。
表 16. IBM ORB プロパティーと等価の VisiBroker プロパティー
IBM ORB プロパティー | 等価の VisiBroker プロパティー | 説明 |
---|---|---|
org.omg.CORBA.ORBInitialHost | vbroker.agent.addr | IBM Transient Naming Server (tnameserv) が稼働しているマシンの IP アドレスまたはホスト名を指定します。このプロパティーのデフォルト値は localhost です。 |
org.omg.CORBA.ORBInitialPort | vbroker.agent.port | IBM Transient Naming Server の listen 先ポートを指定します。 |
com.ibm.CORBA.ListenerPort | vbroker.se.iiop_tp.scm.iiop_tp. listener.port | ORB サーバーが着信要求を listen するポート。このプロパティーを指定すると、ORB は ORB.init() の実行時に listen を開始します。デフォルトでは、このポートは動的に割り当てられます。VisiBroker のプロパティー名 OAport が引き続きサポートされます。 |
com.ibm.CORBA.LocalHost | vbroker.se.iiop_tp.host | このプロパティーは、ORB が稼働しているマシンのホスト名 (または IP
アドレス)
を表します。ローカル・ホスト名は、サーバーのホスト名をリモート・オブジェクトの
IOR に置くために、サーバー・サイド ORB
が使用します。このプロパティーを設定しなかった場合は、InetAddress.getLocalHost().
getHostAddress();
を呼び出すことにより、ローカル・ホストが検索されます。
4.3 では、VisiBroker のプロパティー名 OAipAddr が引き続きサポートされます。 |
com.ibm.CORBA.ThreadPool. MaximumSize | vbroker.se.iiop_tp.scm.iiop_tp. dispatcher.threadMax | Server Connection Manager によって作成可能なスレッドの最大数を指定します。デフォルト値 0 は、制限がないことを意味します。4.3 では、VisiBroker のプロパティー名 OAthreadMax が引き続きサポートされます。 |
com.ibm.CORBA.ThreadPool. InactivityTimeout | vbroker.se.iiop_tp.scm.iiop_tp. dispatcher.threadMaxIdle | アイドル状態のスレッドが破棄されるまでの時間を (秒単位で) 指定します。VisiBroker のプロパティー名 OAthreadMaxIdle が引き続きサポートされます。 |
com.ibm.CORBA.BufferSize | vbroker.orb.streamChunkSize | 最初の試行でソケットから読み取られる (GIOP メッセージとしての) バイト数。バッファー・サイズを増やすと、1 回の試行でメッセージ全体を読み取る確率が高くなり、パフォーマンスの向上につながります。デフォルトは 2048 です。 |
InterChange Server の 4.3 以前のバージョンでは、InterChange Server によって登録されたすべての ORB オブジェクトを識別するために、VisiBroker ORB に osfind ツールが用意されていました。IBM Java ORB には、このために CosNameServer_Dump と呼ばれるツールが用意されています。このツールは、ProductDir¥bin ディレクトリーにあります。詳しくは、「システム管理ガイド」を参照してください。
アップグレードに関する追加情報は、サーバー・スクリプトのアップグレードおよびコンポーネントのアップグレードの完了を参照してください。
注:
キュー・マネージャーと Listener が両方とも稼働中していることを確認します。
InterChange Server の始動方法については、"InterChange Server の設定"を参照してください。
正常に始動したかどうかを確認するには、ProductDir ディレクトリー の InterchangeSystem.log ファイルを検査します。
repos_copy コマンドを使用して、前のバージョンからリポジトリー・ファイルをロードします。例えば、ICS 名が WICS で、ユーザー名/パスワードが admin/null、リポジトリー・ファイル名が repos_backup.jar (4.1.1 からのアップグレードの場合は repos_backup.in を使用する) であれば、次のように入力します。
repos_copy -sWICS_NAME -irepos_backup.jar -uadmin - pnull
リポジトリーについての詳細は、リポジトリーのアップグレードを参照してください。
ICS 4.1.1 からアップグレードする場合は、以下のステップを実行して、ツール用の古い DLM およびコラボレーションをアップグレードします。
ICL についての詳細は、ICL のインポートを参照してください。
これらのステップは、バージョン 4.2.x サーバーの場合は不要です。
アップグレードが正常に処理されたかを検証するには、リポジトリー・スキーマが作成され、すべてのオブジェクトが正常にロードされたかどうかを確認します。この検証には以下の手順を実行します。
既存の InterChange Server にカスタム・ファイルを作成した場合は、次のファイルを評価して、これらのファイルをアップグレードする必要があるかどうかを判断する必要があります。
VisiBroker ORB から IBM Java ORB への移行に対応し、IBM JRE をサポートするために、すべての始動スクリプトが変更されました。この変更内容は次のとおりです。
4.3 以前の始動スクリプトをカスタマイズした場合は、新規の 4.3 スクリプトにも同様な変更を行う必要があります。これらの始動スクリプトには、次のようなカスタマイズが必要な場合があります。
例えば、カスタマイズしたデータ・ハンドラーがある場合は、その .jar ファイルを CLASSPATH 変数に追加します。
アップグレード処理とテストを完了した後は、サーバー始動から -design オプションを除去し、InterChange Server を実動モードで始動できます。
ツール構成ファイル cwtools.cfg のタスクの 1 つは、カスタムの .jar ファイルを提供して、これをコンパイル時に組み込むことです。カスタムの .jar ファイルを作成した場合は、classpath 変数の codeGeneration セクションに追加する必要があります。cwtools.cfg ファイルは以下のディレクトリーにあります。
ProductDir/bin
すべての環境変数が単一の CWSharedEnv ファイルに設定されるようになりました。すべての始動スクリプトでは、その起動プロシージャーの一部としてこのファイルが読み取られます。ICS システム規模のプロパティー (IBM Java ORB のプロパティーなど) が設定されるのは、このファイル内です。アップグレード・プロセスの一環として、次に示すシステム規模のプロパティーが正常に設定されていることを確認してください。
CWSharedEnv ファイルの詳細については、「システム管理ガイド」を参照してください。
リポジトリー表 (スクリプト、データベース表、ストアード・プロシージャーなど) を使用する完全にカスタムのコンポーネントがある場合は、各コンポーネントを評価して、コンポーネントのアップグレードが必要かどうかを判断する必要があります。例えば、新規リリースで変更されたリポジトリー表をストアード・プロシージャーが使用する場合は、このストアード・プロシージャーを変更して、リポジトリー表の新構造と連動する必要があります。
InterChange Server リポジトリーは、InterChange Server コンポーネントについてのメタデータを保持するデータベースです。ICS インストーラーは、ICS リポジトリーの内容を自動的にはアップグレードしません。ただし、前の手順で ICS を始動したときに、ICS は 4.3 以前のリポジトリーにあるスキーマを 4.3 の変更内容によってアップグレードします。アップグレード・プロセスのこの時点で、次のどちらのオブジェクトをリポジトリーにロードするかを決定する必要があります。
インストールを選択したどの特定の ICS コンポーネントの場合でも (別個にインストールしない)、インストーラーは、適切な入力ファイルを ProductDir¥repository ディレクトリーに自動的にコピーします。これらの入力ファイルには、4.3 リリースの一部として インストールした新規コンポーネントのための リポジトリー・オブジェクトが含まれます。
repos_copy を使用して ICS リポジトリーをバックアップした場合は、既存の ICS リリースのコンポーネントに対応するリポジトリー・オブジェクトが格納されているリポジトリー・ファイルが 1 つ以上存在します。
System Manager の InterChange Server Component Management 表示を使用して、サーバーにロードされたコンポーネントを表示することができます。
InterChange Server の 4.1.1 バージョンからアップグレードしていて、データベース・ソフトウェアをアップグレードする必要があった場合は、DBA が新規データベース・サーバーをインストールし、ICS リポジトリーを含む ICS データベースに必要な変更内容を処理しておく必要があります。ICS インストール・プロセスの一環として、これらの ICS データベースの名前は「InterChange Server 構成ウィザード」で指定済みです。ICS の新規バージョンを始動したときに、サーバーはリポジトリー・データベースのスキーマをアップグレード済みです。この新規リポジトリーを初期化するには、既存のリポジトリー・オブジェクトをロードする必要があります。
リポジトリーのロードを準備するには、次の手順を実行します。
ProductDir¥DLMs¥classes¥NativeMaps
ProductDir¥collaborations¥classes¥UserCollaborations
ここで、ProductDir は、新規の 4.3 リリースの製品ディレクトリーです。この手順により、既存のマップおよびコラボレーションの .class ファイルが、新規の 4.3 ディレクトリー構造に確実に置かれるようになります。
既存のリポジトリー・オブジェクトを処理するための各ステップについては、以下のセクションを参照してください。
(リポジトリー・ファイルと呼ばれる) 既存の repos_copy バックアップ・ファイルを調べて、すべての値が新規リポジトリーに関連していることを確認します。既存のリポジトリー・ファイルのバックアップ・コピーを作成し、元のリポジトリー・ファイルを編集することにより、次の情報を修正します。
関係をインポートする場合は、次の属性が、それぞれの関係ごとにリポジトリー・ファイルの内部で有効であることを確認する必要があります。
これらの属性が、repos_copy による ICS リポジトリーへのインポート時に検出できないデータベースを示す場合、InterChange Server はインポート操作全体をロールバックします。ただし、前述の属性をリポジトリーごとに削除すると、InterChange Server はリポジトリーをデフォルトのリレーションシップ・データベースとして使用します。
4.1.1 フォーマットのデータベース接続プールは新規リポジトリーにインポートできません。したがって、リポジトリー・ファイルからはすべての接続プールを削除する必要があります。ICS インスタンスをアップグレードした後は、System Manager 内でこれらの接続プールを再作成する必要があります。
既存のリポジトリー・オブジェクトをインポートする前に、4.3 リポジトリーに既に存在している可能性のある重複オブジェクトを削除する必要があります。この手順が必要な理由は、repos_copy ユーティリティーが、以前のフォーマットをリポジトリーにインポートするときに -ar オプションや -arp オプション (重複オブジェクトを処理するオプション) を認識しないからです。ICS は、リポジトリー・ファイル内に重複オブジェクトを検出すると、インポート操作全体をロールバックします。
これらのリポジトリー・オブジェクトを削除するには、repos_copy ユーティリティーの -d オプションを使用します。例えば、次の repos_copy コマンドを実行すると、リポジトリーの内容が削除されます。
repos_copy -sNewICSinstance -uadmin -pnull -d
この repos_copy コマンドの詳細について、以下に説明します。
リポジトリー・ファイルの内容をリポジトリーにロードするには、repos_copy ユーティリティーを 使用します。ステップ 1 - InterChange Server システムのバックアップで説明したように、repos_copy ユーティリティー の -o オプションを使用して、既存のリポジトリー・オブジェクトをエクスポート し、1 つ以上のリポジトリー・ファイルを作成しておきます。これが終了したら、repos_copy の -i オプションを使用して、これらのリポジトリー・オブジェクトを新規のリポジトリーにインポートします。
例えば、Repository411.txt というリポジトリー・ファイルがある場合を考えます。次の repos_copy コマンドを実行すると、このファイル内のすべてのリポジトリー・オブジェクトがロードされます。
repos_copy -iRepository411.txt -sserverName -uuserName -ppassword -r*
この repos_copy コマンドの詳細について、以下に説明します。
既存のリポジトリー・オブジェクトが新規リポジトリーに存在する場合は、引き続き追加のステップを行ってコラボレーション・テンプレートおよびマップのアップグレードを 完了する必要があります。詳しくは、コラボレーション・テンプレートおよびマップのアップグレードの完了を参照してください。