アップグレード考慮事項

以下のセクションでは、アップグレードのシナリオに関する参照情報を提供します。この参照情報は、Connector for SAP R/3 バージョン 4.6 および IDocs のアップグレード・プロセスに役立つように提供されます。

Connector for SAP R/3

Connector for SAP R/3 バージョン 4.x では、IBM 製品のネーム・スペース /CWLD/ を使用するため、以下に示すガイドラインは、このリネームされた環境で ABAP Handler を動作させるための作業を容易にします。ビジネス・オブジェクトが処理される方法の詳細、およびオブジェクト開発の背景情報については、ABAP Extension Module でのビジネス・オブジェクトの処理を参照してください。

Dynamic Retrieve または Dynamic Transaction を使用するビジネス・オブジェクト

トランザクション・ベースの (Dynamic Retrieve および Dynamic Transaction) タイプのビジネス・オブジェクトの変換機能は、IBM WebSphere BI Station. を通じて提供されます。古いシステムの IBM WebSphere BI Station からビジネス・オブジェクトをテキスト・ファイルにダウンロードした後、新しいシステムの IBM WebSphere BI Station を使用してこのテキスト・ファイルを新しいテーブルにアップロードできます。これを行うには、「ツール」タブの「Object MetaData」オプションを使用します。

以下の点に注意する必要があります。

IDoc または BAPI Handler、およびカスタム作業を使用するビジネス・オブジェクト

Y* で始まる SAP R/3 バージョン 4.x ビジネス・オブジェクトは、IBM 製品の /CWLD/ ネーム・スペースにリダイレクトする必要があります。名前のみが変更されています。SAP の「where used list」機能は、変更する必要のあるすべての参照を検索するために、非常に役立ちます。変更する必要のある最も一般的な参照のリストを以下に示します。検索を完全に実行できたかどうかについてテストします。

表 50 に、/CWLD/ ネーム・スペースの命名規則の変更を示します。パラメーター・リストを変更する必要はありません。

表 50. ネーム・スペース・オブジェクト名の変更
旧名 新規名
機能モジュールのインターフェース・パラメーター
YXR_EVENT-OBJ_KEY /CWLD/LOG_HEADER-OBJ_KEY (3 箇所)
YXR_LOG_H-LOG_NR /CWLD/LOG_HEADER-LOG_NR
YXR_RFCRC-YXR_RFCRC /CWLD/RFCRC_STRU-RFCRC
通常はビジネス・オブジェクト機能グループの TOP インクルード内にある変更点
YXR_CNST /CWLD/CONSTANTS
YXRIFRM0 /CWLD/INBIDOC_FRMS0
データ・エレメント
YXR_VERB /CWLD/OBJ_VERB
テーブル構造体
YXR_CONFIG /CWLD/CONF_VAL
YXR_EVENTS /CWLD/EVT_CUR
YXR_LOG_I /CWLD/LOG_ITEM
YXR_RFC_S /CWLD/OBJ_STRU
LOG_UPDATE 実行ステートメントで参照されるプログラム
SAPLYXR1 /CWLD/SAPLLOG
トリガー機能モジュール (パラメーター・リストを変更する必要はありません)
Y_XR_COMMIT_IDOC_RAISE_DELETE /CWLD/ COMMIT_IDOC_RAISE_DELETE
Y_XR_/ADD_TO_QUEUE /CWLD/ADD_TO_QUEUE

追加の IBM WebSphere ABAP コンポーネント

カスタム・オブジェクトおよびカスタム作業をアップグレードするほかに、以下の作業を行う必要があります。

既存の SAP R/3 バージョン 4.x イベント表に既にイベントを持っている実動場所については、特別な考慮が必要です。これらのイベントを既存のイベント表から新しいイベント表に転送する場合は、必ず IBM ソフトウェア・サポートと連携して行ってください。

IDoc のパッケージ化と再作成

このセクションの説明は、IBM WebSphere SAP R/3 バージョン 3.x ビジネス・オブジェクトにのみ適用されます。

IDoc オブジェクトは、SAP R/3 バージョン 3.x から移送することができないため、新しい SAP R/3 システムで手動で再作成する必要があります。それには、以下の作業を行う必要があります。

IDoc の構造体およびセグメント定義の取り込み

IDoc の最も有用な表現を取り込むには、すべてのセグメントを識別する構造体の全体を取り込んだ後、各セグメントのビジネス・オブジェクト定義を取り込みます。IDoc の明確な表現が得られたら、その表現を使用し、新しいシステムで IDoc を手動で再作成します。

新旧両方のシステムにアクセスできる場合は、古いシステムでビジネス・オブジェクトをコピーし、新しいシステムに貼り付けます。しかし、両方のシステムを同時には利用できない場合は、SAP システムの外部で IDoc およびセグメント定義を参照用として記録する必要があります。これはオプションですが、定義を記録することを強くお勧めします。

IDoc およびセグメント定義の最も有用な表現をダウンロードするには、最初に IDoc の構造体全体をダウンロードし、次に IDoc セグメント定義をダウンロードします。

IDoc 構造体全体のダウンロード

IDoc 構造体全体をダウンロードするには、以下の手順を行います。

  1. 「Develop IDocs Type」画面に移動します (トランザクション WE30)。
  2. IDoc オブジェクト名を入力し、次に「Display」をクリックします (F7)。
  3. すべてのセグメントが表示されるように、IDoc 構造体を展開します。
    1. 構造体のテキスト・バージョンをダウンロードします。
    2. 「System」メニューで、「List」をクリックし、「Save」をクリックしてから、「Local File」をクリックします。
    3. デフォルト・オプションをそのまま受け入れ、「Enter」をクリックします。

      ファイルはテキスト・ファイルとしてダウンロードされるので、任意のテキスト・エディターで表示できます。

    4. ファイルをダウンロードする場所を指定し、「Transfer」をクリックします。
セグメント定義のダウンロード

一度に 1 つのセグメント定義をダウンロードできます。各セグメントについて、以下のステップを繰り返します。セグメント定義をダウンロードするには、以下の手順を行います。

  1. トランザクション SE11 に移動し、セグメント名を入力します。
  2. 「Dictionary Object」メニューで、「Print」をクリックします。

    「Table Structure」ボックスに、必ずチェックマークを付けてください。

  3. 「Print immediately」チェック・ボックスを選択解除し、「new spool request」チェック・ボックスにチェックマークを付け、「Continue」をクリックします。
  4. 「Spool Request Selection」画面に移動し (トランザクション SP01)、印刷要求を表示します。
  5. 「Execute」をクリックし、要求の横にあるチェック・ボックスを選択し、次に「Display comments」をクリックします。
  6. データをダウンロード可能な形式に変換します。
    1. 「Goto」メニューで、「List Display」をクリックします。
    2. セグメントのテキスト・バージョンをダウンロードします。「System」メニューで、「List」をポイントし、「Save」をポイントしてから、「Local File」をクリックします。
    3. デフォルト・オプションをそのまま受け入れ、「Enter」をクリックします。

      ファイルはテキスト・ファイルとしてダウンロードされるので、任意のテキスト・エディターで表示できます。

    4. ファイルをダウンロードする場所を指定し、「Transfer」をクリックします。

テキスト・ファイルを使用してオブジェクトを表現したら、オブジェクト階層をセットアップするために、それらのテキスト・ファイルをスプレッドシート・アプリケーションにインポートします。このようにすると、フィールドを切り取り、SAP アプリケーションのセグメント・エディターに直接貼り付けることができるので、IDoc セグメントの作成が容易になります。

手動による IDoc の再作成

IDoc の表現が得られたら、それを新しいシステムで手動で再作成する必要があります。SAP R/3 バージョン 4.x 環境では、IDoc タイプおよびセグメント定義を格納するために、SAP R/3 バージョン 3.x とは異なるテーブルを使用します。そのため、IDoc 定義を再定義して適切なテーブルを更新するには、SAP のツールを使用する必要があります。このプロセスには、次の 2 つのステップがあります。

SAP R/3 バージョン 3.x データ・エレメントを新しいセグメント・フィールドに割り当てることでセグメントを再作成している際に表示される共通エラー・メッセージに、Invalid data element があります。SAP では、SAP R/3 バージョン 3.x データ・エレメントの多くを、SAP R/3 バージョン 3.x 名の末尾にアンダースコアーと文字 D (_D) の付いたデータ・エレメントに置き換えました。例えば、SAP R/3 バージョン 3.x の CHARG はデータ・エレメントの Batch Number で、SAP R/3 バージョン 4.x では CHARG_D に置き換えられています。

新しい形式のデータ・エレメントが存在しない場合は、SAP R/3 バージョン 4.x システムで新しい形式を探してください。このデータ・エレメントは、SAP R/3 バージョン 3.x システムでのオリジナルと、タイプおよび長さが同じである必要があります。記述は、処理には影響を与えず、また、ログでのみ表示することができます。

重要: IDoc 定義と IBM WebSphere ビジネス・オブジェクト・リポジトリーには直接的な関係があるため、IDoc、セグメント、あるいはセグメント・フィールドの名前は変更しないでください。また、ABAP の機能でも、これらの名前に依拠して IDoc を処理していました。

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