汎用 Customer ビジネス・オブジェクトには、アプリケーション内の顧客レコードまたはオブジェクトに対応する値が含まれます。 値には、会計、住所、銀行、請求、クレジット、外国取引、組織、プロファイル、販売注文、出荷、および税のデータが含まれます。
IBM では顧客の定義を、会社が最低でも関係番号 1、できれば関係 2 から 4 までの 1 つ以上を保持する任意のビジネス・パートナーとします。
関係 | 説明 |
---|---|
1 | ビジネス・パートナーに製品またはサービスを販売します |
2 | ビジネス・パートナーに製品を出荷します |
3 | ビジネス・パートナーに製品またはサービスの請求書を発行します |
4 | ビジネス・パートナーから製品またはサービスの支払いを受けます |
IBM では Customer を会社の顧客階層の最高位にあるエンティティーとして定義します。この顧客は販売注文処理で参照されます。 多くの場合、最高位にあるこの顧客は「SoldTo」顧客として参照されます。
SoldTo 顧客は、ほとんどのアプリケーションでこうした関係のすべてを満たすことができます。 ただし、顧客レコードまたはオブジェクトが関係 2 から 4 のみを満たす場合、IBM ではこのレコードを Customer ビジネス・オブジェクトとして表しません。その代わり、このようなレコードは汎用 CustomerPartner ビジネス・オブジェクトとして表します。
CustomerPartner は SoldTo 顧客と関連するエンティティーを表します。 エンティティーには、別の顧客オブジェクト (ShipTo や BillTo など) または関連する住所 (Billing や Shipping など) が設定できます。 IBM Customer ビジネス・オブジェクト・テンプレートには、関連する各 CustomerPartner ビジネス・オブジェクトへの参照が含まれます。
注: 各 Customer ビジネス・オブジェクトが持つ住所は 1 つのみで、SoldTo 住所になります。その他のすべての住所 (出荷先や請求先など) は CustomerPartner ビジネス・オブジェクトとして表す必要があります。
さまざまなアプリケーションが、次の 2 つの異なる方法のどちらかで顧客関係情報を保管します。
一部のカスタマー・インタラクション・マネージメント (CIM) またはエンタープライズ・リソース・プランニング (ERP) アプリケーションでは、顧客の住所データを従属レコードとして保管します。 すなわち、住所はその顧客データから独立した存在ではなく、親である顧客オブジェクトからのみアクセスできます。 これらの住所は、複数の SoldTo 顧客によって使用されません。
IBM WebSphere Business Integration Server Express Plus でこれらのアプリケーションを扱う場合、各住所は 1 つの CustomerPartner ビジネス・オブジェクトとして表されます。この住所は Customer に従属するため、親である SoldTo 顧客が作成されたあとにのみ作成されます。 同期は IBM WebSphere Business Integration Server Express Plus で以下のようなマルチステップ・プロセスとして行われます。
この方法で情報を保管するアプリケーションの例としては、Baan、Vantive、および Trilogy があげられます。
一部の CIM および ERP アプリケーションでは、顧客データを独立オブジェクトの階層に保管します。 階層最上部にある顧客の役割は、注文を発行できる顧客を表します。 この SoldTo 顧客は、役割を使用してその他の顧客オブジェクトにリンクします。 これらの役割は、ShipTo、BillTo、および Payer を始めとする役割で構成されます。
図 1 は、一般的な SoldTo 顧客とその他の顧客オブジェクトとの関係を示しています。
こうしたアプリケーションの場合、従属顧客オブジェクトは複数の SoldTo 顧客と関連付けることができ、SoldTo 顧客の作成前に作成できます。 SoldTo 顧客は関連する顧客へのリンクを保管するため、SoldTo 顧客がそのリンクを持つ前に、従属する顧客の存在が必要になります。
IBM WebSphere Business Integration Server Express Plus でこれらのアプリケーションを扱う場合、各従属顧客は 1 つの CustomerPartner ビジネス・オブジェクトとして表されます。 同期は IBM WebSphere Business Integration Server Express Plus で以下のようなマルチステップ・プロセスとして行われます。
注: IBM では、SoldTo 顧客とその従属顧客または住所との関係が常に親オブジェクトに保管されるように (つまり、Customer ビジネス・オブジェクトが CustomerPartner ビジネス・オブジェクトを参照するように) Customer および CustomerPartner ビジネス・オブジェクトを設計しています。関係を子オブジェクトに保管するアプリケーションは、Customer ビジネス・オブジェクトへマップするアプリケーション固有ビジネス・オブジェクトを起動するように構成する必要があります。
この方法で情報を保管するアプリケーションの例としては、SAP、PeopleSoft、および Clarify があげられます。
販売注文は SoldTo 顧客を参照する必要があり、請求書類は BillTo 役割を果たす顧客のみに送付されるため、IBM ではすべての Customer および CustomerPartner ビジネス・オブジェクトをタイプ別にカテゴリー化します。 タイプは、アプリケーション内で顧客または住所を定義する方法を表します。
アプリケーションが各顧客タイプを独自の方法で処理できるようにするため、汎用 Customer ビジネス・オブジェクトでは、各 Customer および CustomerPartner ビジネス・オブジェクトにタイプを 1 つだけ許可します。 このタイプは属性 (CustomerType または PartnerType) として保管されます。
IBM が顧客を定義する方法の関係で、一般に Customer ビジネス・オブジェクト上の CustomerType 値は SoldTo となり、CustomerPartner オブジェクト上の PartnerType 値はほかの任意のタイプ (ShipTo、BillTo、Payer、Postal、Delivery など) に設定できます。 したがって、顧客は ShipTo 顧客または BillTo 顧客にできますが、両方を設定することはできません。
注: CustomerType または PartnerType 属性の値は、宛先アプリケーションで顧客データが作成されたあとには変更できません。ただし、役割機能をサポートするアプリケーションの場合、顧客オブジェクトは Customer および CustomerPartner によって追加の役割 (SoldTo 以外) を担えるようになります。
アプリケーションの中には、「RoleFunction」として知られる機能を使用することで、顧客オブジェクトが複数タイプとして働くものもあります。 例えば、SoldTo 顧客は ShipTo および BillTo 顧客にもなれるように自分自身を参照することができます。 このようなアプリケーションの場合、BillTo および ShipTo として自身を参照する SoldTo 顧客としてオブジェクトを作成します。
この例の場合、CustomerType は SoldTo となり、Customer ビジネス・オブジェクトは ShipTo および BillTo という 2 つの RoleFunction を持つことになります。 役割機能は Customer の RoleUsage 子ビジネス・オブジェクトに保管されます。CustomerPartner には、従属する顧客または住所で複数の機能を持てるようになる RoleUsage 子ビジネス・オブジェクトも含まれます。
アプリケーション固有のビジネス・オブジェクトについての詳細は、それぞれのアプリケーション・ビジネス・オブジェクトの解説ページを参照してください。
注: 一般に SoldTo は、ほかの SoldTo の顧客役割として機能できません。したがって、この関係を許可するアプリケーションの場合でも、SoldTo をほかの SoldTo の BillTo として表すように構成しなければならない場合があります。
要約すると、Type は顧客の種類を示し、Function は顧客が担う役割の種類を示すことになります。
アプリケーションによっては、各顧客オブジェクトが複数の組織と関連することもあります。 例えば、会社は米国と欧州にある販売組織の両方から顧客 X に販売できます。
顧客ごとに複数の組織を保管するアプリケーションの場合、顧客に関するすべての一般情報はトップレベルに、組織固有の情報は従属レベルにそれぞれ保管できます。 図 2 は、このような組織階層を示しています。
図 2. 複数の組織を持つ顧客
汎用 Customer ビジネス・オブジェクトは顧客ごとに 1 つの組織データしか持てないため、顧客の組織への拡張部分ごとに Customer ビジネス・オブジェクトの別個のインスタンスが必要になります。
例えば、顧客 X についての組織の説明とすると、両方の販売組織のデータを同期した場合、IBM WebSphere Business Integration Server Express Plus では次の手順が必要になります。
したがって、ソース・アプリケーション側で複数の組織を持つ顧客データを示す場合には、ソース・アダプターで各組織の固有データごとにイベントを 1 つ作成する必要があります。
複数の組織が保管されているソース・アプリケーションから、1 つの組織が保管されている宛先アプリケーションに同期している場合には、次のインプリメンテーション・オプションがあります。
このバージョンの汎用 Customer ビジネス・オブジェクトは、さらに多くの顧客情報を同期できるようにするために追加属性およびいくつかの追加子ビジネス・オブジェクトが含まれた点で、以前リリースされたバージョンと異なります。 次の追加ビジネス・オブジェクトで提供されるデータを同期する場合に、このバージョンの Customer を使用してください。
このバージョンの Customer には Sales Order、Billing、および Shipping データ用の別個の子ビジネス・オブジェクトも含まれるため、こうした領域の情報を同期するために追加の属性が提供されます。
このバージョンの Customer を使用するには、Customer Manager コラボレーション・テンプレートではなく、CustomerSync コラボレーション・テンプレートをインストールして使用してください。
Customer は階層型ビジネス・オブジェクトです。 図 3 は、その子ビジネス・オブジェクトを示しています。
図 3. 子ビジネス・オブジェクト
Customer には、ほとんどのアプリケーションで基本顧客とみなされる SoldTo 顧客に関する情報が含まれます。 顧客の名前、アプリケーションで使用される番号、タイプ、言語、組織、口座を開いた人物、および状況などの情報が含まれます。 Customer には、以下の子ビジネス・オブジェクトが含まれます。
子ビジネス・オブジェクト | 説明 | カーディナリティー |
---|---|---|
CustomerAddress | SoldTo 顧客の住所情報を含みます。 CustomerAddress は PhoneInfo および RoleUsage を含みます。 | 1 |
PhoneInfo | SoldTo 顧客の電話情報を含みます。 | n |
RoleUsage |
|
n |
RelatedCustomerRef | SoldTo 顧客にリンクされた関連する任意の取引先または住所への参照を含みます。 RelatedCustomerRef は RoleUsage を含みます。 注: このオブジェクトには関連するエンティティーへの参照のみが含まれます。エンティティーの値は含まれません。 | n |
CustomerInformation |
顧客情報を示す次のすべての子ビジネス・オブジェクトを含みます。
|
1 |
CreditAreaCreditData | CustomerCreditData の子としては、特定クレジット・エリアの SoldTo 顧客に関するクレジット・データを含みます (欧州のクレジット・エリアに米国のクレジット・エリアと異なる情報がある場合など)。属性は、クレジット制御エリア (顧客の信用を調査する組織)、貸付限度額、貸付限度額の通貨コード、信用調査のリスク・カテゴリー、信用管理の信用担当グループ、信用関連業務を担当する従業員、信用保険データ (信用保険をかけている限度額および信用保険会社など)、顧客がクレジット・ホールドまたはクレジット・ブロックの適用対象外かどうかを示すフラグ、Dun、Bradstreet および TRW による評価を含みます。 | n |
CustomerAccountingData | CustomerInformation の子としては、SoldTo 顧客の Accounts Receivable データを含みます。 | 1 |
CustomerBankData | CustomerInformation の子としては、銀行の国と番号、銀行口座番号と種別、回収権限の有無を示すフラグなど、SoldTo 顧客に関する銀行用データを含みます。 | n |
CustomerBillingData | CustomerInformation の子としては、輸送条件、支払い条件と方法、および請求スケジュールなど、SoldTo 顧客に関する請求データを含みます。 | 1 |
CustomerCreditData | CustomerInformation の子としては、貸付限度額、任意のクレジット制御エリアにおける貸付限度額の上限、および貸付限度額の通貨コードなど、SoldTo 顧客に関するクレジット・データを含みます。CustomerCreditData は CreditAreaCreditData を含みます。 | 1 |
CustomerForeignTradeData | CustomerInformation の子としては、SoldTo 顧客が Table of Denials リストまたは Specially Designated Nationals リスト (米国が取引を禁止している国のリスト) の対象かどうかを示すフラグと顧客がこれらのリストで調査された最終日付、および顧客がお客様の会社のボイコット・リストに記載されているかどうかを示すフラグと顧客がこのリストの基準で調査された日付など、SoldTo 顧客に関する輸出制御管理情報を含みます。 | n |
CustomerProfileData | CustomerInformation の子としては、総収入、従業員数、銘柄記号、標準機構、Web サイト・アドレス、所有権のタイプ (例えば、Public または Private)、および産業など、SoldTo 顧客に関するマーケティング・データを含みます。 | 1 |
CustomerSalesOrderData | CustomerInformation の子としては、営業所と販売グループ、SoldTo 顧客の営業担当員 ID、顧客グループ (一般にビジネス・ルールまたは将来の処理で使用)、価格グループと価格リストの ID、通貨コード、顧客に許可された最小および最大の注文値など、SoldTo 顧客に関する販売および価格設定データを含みます。このデータは販売注文についてのデフォルト情報としてよく使用されます。 | 1 |
CustomerShippingData | CustomerInformation の子としては、運送会社、希望する配達オプション、1 細目に許可される配達数、および注文細目を複数の出荷に分割可能かどうかを示すフラグ、SoldTo 顧客による後積み注文の許可有無を示すフラグ、不完全な注文の出荷可否を示すフラグなど、SoldTo 顧客に関する出荷データを含みます。 | 1 |
CustomerTaxData | CustomerInformation の子としては、税 ID、コード、管轄権、および SoldTo 顧客に 1099 フォームが必要かどうかを示すフラグなど、SoldTo 顧客に関する税データを含みます。CustomerTaxData は CustomerTaxExemptLicenseData を含みます。 | 1 |
CustomerTaxExemptLicenseData | CustomerTaxData の子としては、SoldTo 顧客の控除ライセンスを含みます。 | n |
Notes | CustomerInformation の子としては、SoldTo 顧客のメモが入ります。例えば、配送や請求に関する説明などです。 | n |
汎用 Customer ビジネス・オブジェクトは、次の動詞をサポートします。
汎用 Customer ビジネス・オブジェクトの属性をリストするには、System Manager または Process Designer Express を使用してください。