Wrapper コラボレーション・テンプレート

IBM WebSphere Business Integration コラボレーション・テンプレートは、ビジネス・オブジェクトをエンタープライズ・システムの複数のアプリケーションにわたって同期します。処理の際に、コラボレーションは、トリガー・ビジネス・オブジェクトに関連付けられたビジネス・オブジェクトをしばしば同期または検証します。

例えば CustomerSync コラボレーションは、ソース・アプリケーションまたは別の IBM WebSphere Business Integration コラボレーションが、それに対して汎用 Customer ビジネス・オブジェクトを送信したときに起動されます。CustomerSync は、主 Customer データを同期することに加え、汎用 CustomerPartner ビジネス・オブジェクトを使用して、代金請求先や発送先住所などの関連する顧客データを検証または同期するように構成できます。

IBM WebSphere Business Integration コラボレーション・テンプレートでは、トリガー・ビジネス・オブジェクトに関連付けられたビジネス・オブジェクトを検証または同期することが一般的なため、IBM はそのような関連付けられたビジネス・オブジェクトを検証および同期するための処理ロジックを、別個の中間コラボレーションとして独立させました。

これらの中間コラボレーションは、アプリケーション・コネクターによって直接起動されることはありません。その代わりに、これらのテンプレートは、呼び出し側コラボレーションが Sync または Exists 動詞を使用して送信した特定のビジネス・オブジェクトにサブスクライブします。呼び出し側コラボレーションは、トリガー・ビジネス・オブジェクトに保管された外部キーを通じて、関連付けられたビジネス・オブジェクトを参照します。そのため、中間コラボレーションは、キー属性にのみ値を持った、トリガー・ビジネス・オブジェクトを受け取ります。

中間コラボレーションは、次の 2 つの操作のいずれかを実行するように設計されています。

呼び出し側コラボレーションはビジネス・オブジェクトの同期を、適切な同期コラボレーションを呼び出す中間コラボレーションに委任するため、これらの中間コラボレーションは、同期コラボレーションをラップする と言われます。そのため、中間コラボレーションは、ラッパー と呼ばれます。これらのコラボレーションは、それらを起動するビジネス・オブジェクトのタイプに応じて命名されます (例えば、CustomerPartnerWrapper コラボレーション、CustomerWrapper コラボレーション、ItemWrapper コラボレーションなど)。どの BusinessObjectWrapper コラボレーションもロジックは同一なので、この参照ページでは、それらに共通の資料となります。

コラボレーション・オブジェクトのセットアップ

この節では、ポート・バインディングについて説明し、Wrapper に基づくコラボレーション・オブジェクトをセットアップするために必要なステップを説明します。コラボレーション・テンプレートの標準の機能、ポート、および構成プロパティーについて、およびコラボレーション・オブジェクト作成に関する一般情報については、『Required Documents for Creating Collaboration Objects』にリストされている文書を参照してください。

ポート情報

図 1 に、System Manager で表示される CustomerWrapper のポートを示します。その他の Wrapper コラボレーションも同じポートを使用しますが、ビジネス・オブジェクトは異なります。

図 1. BusinessObjectWrapper コラボレーションのポート

注: コラボレーション・オブジェクトでポートを使用しないようにするには、そのポートをポート・コネクターにバインドしてください。これにより、コラボレーション・オブジェクトが追加機能を提供せずに、そのポートは未使用として示されます。

ポート名: DestinationAppRetrieve
ビジネス・オブジェクト バインド先 機能 使用される動詞
BusinessObjectWrapper の名前の元になっているビジネス・オブジェクト。例えば、CustomerPartnerWrapper は参照値の CustomerPartner ビジネス・オブジェクトを送信します。 コネクター 宛先アプリケーションから Wrapper コラボレーションのビジネス・オブジェクトを検索するために使用します。

Retrieve


ポート名: To
ビジネス・オブジェクト バインド先 機能 使用される動詞
BusinessObjectWrapper の名前の元になっているビジネス・オブジェクト。例えば、CustomerPartnerWrapper は参照値の CustomerPartner ビジネス・オブジェクトを送信します。 別のコラボレーションの、トリガーとなるポート Wrapper コラボレーションのビジネス・オブジェクトを送信するために使用します。

Create


ポート名: SourceApp
ビジネス・オブジェクト バインド先 機能 使用される動詞
BusinessObjectWrapper の名前の元になっているビジネス・オブジェクト。例えば、CustomerPartnerWrapper は CustomerPartner ビジネス・オブジェクトによって起動されます。 コネクター

ソース・アプリケーションから、トリガー・ビジネス・オブジェクトを検索するために使用します。

Retrieve


ポート名: From
ビジネス・オブジェクト バインド先 機能 使用される動詞
BusinessObjectWrapper の名前の元になっているビジネス・オブジェクト。例えば、CustomerPartnerWrapper は CustomerPartner ビジネス・オブジェクトによって起動されます。

呼び出し側コラボレーション

トリガー・ビジネス・オブジェクトを受信するために使用します。

Sync Exists

コラボレーション・テンプレートのプロセス

この節では、プロセスの同期および検証について説明します。

同期プロセス

図 2 に、BusinessObjectWrapper の同期プロセスを示します。

図 2. BusinessObjectWrapper コラボレーションの同期プロセス

BusinessObjectWrapper は、トリガー・ビジネス・オブジェクトを Sync 動詞によって受信すると、そのビジネス・オブジェクトをソース・アプリケーションに Retrieve 動詞を使用して送信します。

検索操作が成功すると、BusinessObjectWrapper は、戻されたビジネス・オブジェクトを Create 動詞を使用して、関連付けられた同期コラボレーションに送信します。例えば ItemWrapper は、Item ビジネス・オブジェクトを ItemManager コラボレーションに送信します。

Retrieve 操作が不成功だった場合、BusinessObjectWrapper は呼び出し側コラボレーションに失敗の状況を戻し、エラー #4 を記録します。

注:

検証プロセス

図 3 に、BusinessObjectWrapper の検証プロセスを示します。

図 3: BusinessObjectWrapper コラボレーションの検証プロセス

BusinessObjectWrapper は、トリガー・ビジネス・オブジェクトを Exists 動詞によって受信すると、そのビジネス・オブジェクトを宛先アプリケーションに Retrieve 動詞を使用して送信します。

Retrieve 操作が成功した場合、BusinessObjectWrapper は呼び出し側コラボレーションに成功の状況を戻します。Retrieve 操作が不成功だった場合、BusinessObjectWrapper は CONTINUE_WITH_WARNING プロパティーの設定を評価します。

注: BusinessObjectWrapper のメッセージについての詳細は、以下のコラボレーション・メッセージ・ファイルを参照してください。\collaborations\messages\BusinessObjectWrapper.txt。

構成プロパティー

プロパティー名とその説明 可能な値 デフォルト値

CONTINUE_WITH_WARNING

BusinessObjectWrapper が次のいずれかの場合に、イベントに失敗する代わりに警告を発行するようにするには、「true」に設定します。

  • Wrapper コラボレーションが、宛先アプリケーションのビジネス・オブジェクトの検証に失敗した場合。
  • 同期コラボレーションが、Wrapper コラボレーションから Create 動詞によって受け取ったビジネス・オブジェクトの同期に失敗した場合。

BusinessObjectWrapper は、呼び出し側コラボレーションに成功の状況を戻します。トレース・レベルが 3 以上に設定されている場合、BusinessObjectWrapper は警告メッセージを発行します。

コラボレーションがエラー・メッセージを記録し、呼び出し側コラボレーションに失敗の状況を戻すようにするには、「false」に設定します。

true、false false

コラボレーション・メッセージ

注: 情報を提供するメッセージがトレース先に表示されるのは、トレース・レベルが 3 以上に設定されている場合のみです。

このコラボレーション・テンプレートのメッセージの説明を表示するには、Log Viewer を起動し、コラボレーション・テンプレートのメッセージ・ファイルを開いてください。Log Viewer を起動してコラボレーション・テンプレートのメッセージ・ファイルを開くには、以下の手順に従います。

  1. 「スタート」メニューで、「プログラム」>「IBM WebSphere InterChange Server」>「IBM WebSphere Business Integration Toolset」>「Administrative」>「Log Viewer」の順にクリックします。
  2. 「ファイル」メニューで、「開く」をクリックします。
  3. 「Look In」フィールドを使用して、現在のフォルダーを WebSphere_ICS_root_dir \collaborations \messages に変更し、このコラボレーション・テンプレートのメッセージ・ファイルを選択します。

Copyright IBM Corp. 1997, 2003