ReturnStatus コラボレーション・テンプレート

ReturnStatus コラボレーションは、エンタープライズ・リソース・プランニング (ERP) アプリケーションから Customer Interaction Management (CIM) アプリケーションへ、返品状況データを同期します。 注文管理システムにおいて、注文および返品の状況情報が変化すると、コラボレーションは宛先アプリケーションに状態の変化を送信します。

ERP と CIM アプリケーション間で返品の状況を同期するため、返品がすでに存在している必要があります。 コラボレーションは、返品状況を更新する要求を送信する前に、宛先アプリケーションにその返品が存在するかどうか検証します。 状況の変更は既存の返却注文に対して行われるので、コラボレーションは Update 動詞とともにのみビジネス・オブジェクトを送信します。

各状況ビジネス・オブジェクトは、そのオブジェクトが状況を追跡する返却注文の形式を反映します。 例えば、返却注文に 3 つの品目が含まれる場合、状況ビジネス・オブジェクトには、注文ヘッダーと返却注文の 3 つの品目が含まれます。 ヘッダー情報は、返却注文の状況全体の要約表示を提供します。

通常、販売注文プロセスは、電話販売担当者や顧客サービス担当者 (CSR) が顧客との応対で注文を取ったり見積もりを作成したりするときに、CIM アプリケーションで発生します。 注文をフロント・オフィス・アプリケーションに保管した後、電話販売担当者や CSR は注文を ERP アプリケーションに送信し、ERP はそれを処理して記帳します。 ERP プロセスには、注文作成、商品の配送、顧客への請求、商品の返品、あらゆるサービスや修復などが含まれます。

フロント・オフィス担当者が行う将来の要求や変更内容も ERP システムに送信され、変更内容が処理されます。 ERP システムの返却注文に発生するあらゆる状況の変更は、ReturnStatus コラボレーションによって迅速に CIM システムに戻されます。

複数の汎用オブジェクトの使用による注文ライフ・サイクルのレポート

ReturnStatus コラボレーションは、汎用 ReturnsStatus ビジネス・オブジェクトを使用して、返却注文に状況データを提供します。

注文ライフ・サイクルのプロセスには、単純なものから複雑なものまであります。

ReturnStatus コラボレーションは、汎用 ReturnsStatus ビジネス・オブジェクトを使用して、販売注文のライフ・サイクル中に返却注文の状態への変更をレポートします。例えば、ERP の返却注文で数量が変更されると、この更新は ReturnStatus コラボレーションによってサブスクライブされ、状況が CIM と同期されます。

状況更新を発生させるには、返却注文が ERP と CIM アプリケーションの両方に存在する必要があります。 このコラボレーションは返却注文を同期せず、アプリケーション間の状況のみを同期します。 コラボレーションは、状況値を更新する前に、ERP アプリケーションで参照される注文が CIM アプリケーション内に何らかの形式で存在することを確認します。 存在しない場合、コラボレーションはエラーを記録して停止します。

ERP から CIM アプリケーションへの同期

ERP アプリケーションは常にソースとして機能します。これは、返却注文への更新が常にバック・オフィス・アプリケーションで行われるためです。 ERP アプリケーションが状態の変更を返却注文に記録するたびに、コラボレーションは返却注文の特定の状況変更を CIM アプリケーションに送信します。

ReturnStatus コラボレーションによって実行される同期は、フロント・オフィス・アプリケーションを使用して顧客の照会に応答する CSR や電話販売担当者を主に対象としていますが、コラボレーションはフロント・オフィスへの顧客からの電話によって起動されるものではありません。 その代わり、ERP アプリケーションで状況変更が行われるときに、それが CIM アプリケーションに送られます。 ERP アプリケーションで返却注文の状況が変更されると、すぐに CIM アプリケーションに同期されるので、CSR や電話販売担当者は、顧客から要求されたときに注文の現在の状況を見ることができます。

コラボレーション・オブジェクトのセットアップ

この節では、ポート・バインディングについて説明し、ReturnStatus に基づくコラボレーション・オブジェクトをセットアップするために必要なステップを説明します。コラボレーション・テンプレートの標準の機能、ポート、および構成プロパティーについて、およびコラボレーション・オブジェクト作成に関する一般情報については、『Required Documents for Creating Collaboration Objects』にリストされている文書を参照してください。

ポート情報

図 1 に、System Manager で表示される ReturnStatus のポートを示します。 各ポートについての情報は、図の後にある表に示します。

図 1. ReturnStatus コラボレーションのポート

注: コラボレーション・オブジェクトでポートを使用しないようにするには、そのポートをポート・コネクターにバインドしてください。これにより、コラボレーション・オブジェクトが追加機能を提供せずに、そのポートは未使用として示されます。

ポート名: DestinationAppRetrieve
ビジネス・オブジェクト バインド先 機能 使用される動詞
ReturnsStatus 宛先アプリケーションのコネクター 参照値のビジネス・オブジェクトを送信して、完全な値のビジネス・オブジェクトを検索します。この結果により、Order を同期するときに使用される動詞が決定します。

Retrieve


ポート名: From
ビジネス・オブジェクト バインド先 機能 使用される動詞
ReturnsStatus ソース・アプリケーションのコネクター、または呼び出し側コラボレーション トリガー・ビジネス・オブジェクトを受け取ります。コラボレーションが正常に終了した場合、このポートは、同期呼び出しの最後に、トリガー・ビジネス・オブジェクトをソース・アプリケーションに戻します。

Create Retrieve Update Delete


ポート名: To
ビジネス・オブジェクト バインド先 機能 使用される動詞
ReturnsStatus 宛先アプリケーションのコネクター

トリガー・ビジネス・オブジェクトをコラボレーションから送信します。

Create Update Delete

コラボレーション・オブジェクトのセットアップ

ReturnStatus のスタンドアロンとして使用

ReturnStatus は、スタンドアロンのコラボレーションとして使用するよう設計されています。 ReturnStatus をスタンドアロンのコラボレーションとしてセットアップする手順は、以下のとおりです。

  1. ReturnStatus コラボレーション・オブジェクトを作成します。
  2. ポート情報』の説明に従って、コラボレーション・オブジェクトの各ポートをバインドします。
  3. ReturnsBillingStatus の構成プロパティーを設定します。 

コラボレーション・テンプレートのプロセス

この節では、このコラボレーション・テンプレートのプロセス・ロジックについて説明します。

プロセス・ロジックの概要

図 2 は、ReturnStatus のプロセス・ロジックを示しています。

図 2. ReturnStatus コラボレーションのプロセス・ロジック

継承されたプロセス・ロジック

このコラボレーション・テンプレートでは、以下の標準コラボレーション・ビジネス・プロセスが使用されます。

これらのビジネス・プロセスについては、『Required Documents for Creating Collaboration Objects』を参照してください。

差し戻し処理

InterChange Server は、トランザクション・コラボレーションのいずれかのステップで失敗が発生した場合、トランザクションをロールバックできます。例えば、ReturnStatus がトランザクションのコラボレーションに参加するコラボレーション・オブジェクト・グループのメンバーである場合、ReturnStatus のアクションは、より大きなトランザクションの 1 つのサブトランザクション・ステップとなります。 コラボレーション・オブジェクト・グループのビジネス・プロセスでいずれかのステップが失敗すると、トランザクション・コラボレーションは InterChange Server がグループ内のコラボレーションの処理をどのようにロールバックすればよいか明示します。

ReturnStatus コラボレーション・オブジェクトをほかのコラボレーション・オブジェクトと無関係に使用する場合、または From ポートを別のコラボレーションではなくソース・アプリケーションにバインドする場合、そのプロセスを構成するトランザクション・ステップは 1 つのみになります。このような場合には、ロールバックを実行する必要はありません。

1 つのコラボレーション・オブジェクト、またはコラボレーション・オブジェクト・グループにロールバックを実行させるには、コラボレーション・テンプレートを変更する必要があります。WebSphere Business Integration システムにおけるトランザクション処理を理解するためには、「テクニカル入門 (IBM WebSphere InterChange Server)」を参照してください。コラボレーション・テンプレートへのトランザクション処理の追加については、『Required Documents for Creating Collaboration Objects』を参照してください。

トランザクション処理を実行できるようにコラボレーション・オブジェクトを拡張するには、以下の手順を完了します。

  1. この機能を、そのコラボレーション・テンプレートと、コラボレーション・オブジェクト・グループ内の他のすべてのコラボレーション・テンプレートに追加します。
  2. コラボレーション・オブジェクト、およびコラボレーション・オブジェクト・グループのすべてのメンバーの最小トランザクション・レベルを、None より大きい値に設定します。「最小限の努力」以上に設定した場合、いずれかのサブトランザクション・ステップで失敗が発生すると、このコラボレーション・オブジェクトおよびグループ内のほかのコラボレーション・オブジェクトは、すべてのビジネス・オブジェクトに対して実行された Create、Update、および Delete 操作に対して差し戻しを実行します。
  3. コラボレーション・オブジェクト、およびコラボレーション・オブジェクト・グループの他のすべてのメンバーの USE_RETRIEVE プロパティーを「true」に設定します。コラボレーション・オブジェクトに対して、値を変更する前に検索するように強制すると、コラボレーション・オブジェクトは Update または Delete プロセスの際に元の値を復元できるようになります。

構成プロパティー

注: ReturnStatus には、独自の構成プロパティーがありません。そのプロパティーはすべて標準のものです。

標準プロパティー

このコラボレーション・テンプレートでは、以下のコラボレーション・テンプレートの標準構成プロパティーを使用します。

これらの構成プロパティーについては、『Required Documents for Creating Collaboration Objects』を参照してください。

コラボレーション・メッセージ

このコラボレーション・テンプレートのメッセージの説明を表示するには、Log Viewer を起動し、コラボレーション・テンプレートのメッセージ・ファイルを開いてください。Log Viewer を起動してコラボレーション・テンプレートのメッセージ・ファイルを開くには、以下の手順に従います。

  1. 「スタート」メニューで、「プログラム」>「IBM WebSphere InterChange Server」>「IBM WebSphere Business Integration Toolset」>「Administrative」>「Log Viewer」の順にクリックします。
  2. 「ファイル」メニューで、「開く」をクリックします。
  3. 「Look In」フィールドを使用して、現在のフォルダーを WebSphere_ICS_root_dir \collaborations \messages に変更し、このコラボレーション・テンプレートのメッセージ・ファイルを選択します。

アップグレード情報

アップグレード処理

このコラボレーション・テンプレートのより新しいバージョンにアップグレードするには、以下の手順を行います。

  1. 現在の ReturnStatus コラボレーションを停止します。
  2. リポジトリーをバックアップします。詳しくは、「システム管理ガイド」を参照してください。
  3. コラボレーション・テンプレートをカスタマイズしている場合には、以下の手順を行います。
  4. 新規の ReturnStatus コラボレーション・テンプレートをインストールします。
  5. 新しいコラボレーション・テンプレートにカスタマイズを追加します。
  6. 新しいコラボレーション・オブジェクトを作成し、適切なコネクターにバインドします。 詳しくは、『コラボレーション・オブジェクトのセットアップ』を参照してください。
  7. 新しいコラボレーション・オブジェクトを実行してテストします。
  8. テスト中に見つかった問題点に基づいて、コラボレーション・オブジェクトを変更します。

Copyright IBM Corp. 1997, 2003