IBM® Enterprise
Records は、IBM FileNet® P8 製品スイートのアドオン・コンポーネントです。 IBM Enterprise
Records を使用すると、電子情報と物理情報の両方に対して正確性、安全性、および信頼性の高いレコードを作成し管理できます。IBM Enterprise
Records では、格納メディアまたは格納形式に関係なく、あらゆるタイプのレコードを管理できます。 IBM Enterprise
Records について理解するには、レコードとは何か、およびなぜレコード管理システムを使用するのかを理解する必要があります。
レコード管理
レコード管理とは、レコードの作成、格納、使用、検索、および廃棄の計画、制御、整理などの管理アクティビティーです。 レコード管理には、作成、実際の使用、非使用時の格納、廃棄というライフ・サイクルにわたってレコードを保守するために実行するすべてのアクティビティーが含まれます。
レコード管理の必要性
組織情報の正確性、完全性、およびアクセスのしやすさを保証するには、信頼できるレコード管理システムを構築する必要があります。 そのようにしない場合、手動で情報を検索したり、紛失または誤って分類されたレコードを検索したりなど、非生産的なアクティビティーに多くの時間を費やすことになります。
レコード管理システムが存在しなければ、レコード保持に関する法律と規則の制定、解釈、および準拠が難しくなります。 レコード管理システムがないことにより、厳しい罰金や罰則などの法的結果を被るおそれがあります。 また、レコードを適正に維持管理しなかった場合、重要情報に関する訴訟、機密保持、および安全性に関連するリスクにさらされることにもなりかねません。
こうしたリスクを抑えるために IBM Enterprise
Records を使用します。 IBM Enterprise
Records を使用すると、有用な情報をレコードとして保持しておき、必要時に検索技術を使用して利用できると同時に、不要なレコードまたは非アクティブなレコードを削除またはアーカイブできます。
レコード管理における IBM Enterprise
Records の役割
ストレージ・メディアに関係なく、組織全体にわたるレコードを管理できます。
IBM Enterprise
Records の目的は、次のアクションを確実に完了することです。
- 必要時に組織内のすべてのレコードに簡単にアクセスする。
- 法律、規則、または管理者命令によって有効または必要でなくなったレコードを廃棄する。
IBM Enterprise
Records を使用すると、次のタスクを完了できます。
- レコード格納のための階層構造 (ファイル・プラン) を作成および維持する。
- 電子レコードと物理レコードの両方を管理する。
- レコードが収められているリポジトリーのセキュリティを確保する。
- レコードの保存および廃棄ルールを作成する。
- これらのルールに基づいてレコードを保管または破棄する。
- レコードへのアクセス権を制御する。
- 検索条件に基づいてレコードを検索する。
- 組織で不要になったレコードを削除する。
IBM Enterprise
Records の機能と利点
次の表に、
IBM Enterprise
Records の機能とその利点をリストします。
機能 |
利点 |
レコードの一元的なリポジトリー |
- 組織内のあらゆる情報の利用。
- 関連情報を即座に利用できるため、意思決定が効率化。
|
電子および物理ドキュメントのレコードを階層内に格納するための仮想保管場所およびコンテナー |
- ハードコピー・ドキュメントと電子ファイルの管理。
- 実際のオフィス環境のシミュレーション。
- 仮想の格納場所とコンテナーによって実際の物理格納構造をモデル化。
- レコードの管理と検索に必要なオフィス・スペース、機器、および人員の削減によるコスト管理。
|
使いやすい検索機能 |
- 複雑な照会構文を使用せずに必要な情報に迅速、簡単にアクセス。
|
レコードの保存および廃棄ルール |
ユーザー定義によって以下を制御できます。 - レコードの保持期間。
- 保存期間の終わりにおけるレコードの処理。
- 廃棄前のレコードのレビュー。
|
レコードの監査手順、保存期間の自動トラッキング、およびレコード廃棄処理の実行 |
- レコードの廃棄、変更、処理、破損、紛失が誤って行われない。
- レコードの廃棄は廃棄スケジュールに基づいて、または監査手順の一部として行われる。
- 不要になったレコードの廃棄による格納スペースの減少。
|
レコードのインポートとエクスポート |
- 組織で頻繁には使用しないレコードを別の場所にエクスポートできる。 これらのドキュメントは、政府の法規に準拠するために保持する必要があるレコードです。
- 他のレコード・リポジトリーからインポートできる。
|
レコードの適切なセキュリティー制御 |
- 権限のないユーザーはレコードにアクセスできない。
- 誤ってレコードが削除されることがない。 レコード管理者によって、または監査手順の結果としてのみレコードを削除できる。
- 適切なアクセス権を持っているユーザーのみがレコード管理操作を完了できる。
|
IBM FileNet P8 Workplace、Workplace XT、IBM Content
Navigator、Microsoft Office、および Microsoft Outlook との統合 |
以下からレコードを手動で削除できます。 - Workplace または Workplace XT
- IBM Content
Navigator
- Microsoft Outlook、Word、Excel、および Power Point
- エントリー・テンプレート
|
IBM Enterprise
Records のユーザー・ロール
IBM Enterprise
Records には、ロール・ベースのユーザー・セキュリティー・モデルが用意されています。これらは、レコード管理者、レコード・マネージャー、特権ユーザー、およびレコード・ユーザーです。 各ロールは、そのロールのユーザーが完了できるタスクを決定します。詳しくは、セキュリティーに関するトピックを参照してください。
IBM Enterprise
Records インストールのタイプ
IBM Enterprise
Records アプリケーションをインストールする前に、レコード管理の要件を満たすインストール・タイプ (データ・モデル) を選択する必要があります。 選択できるデータ・モデルは以下の通りです。
- Base: 基本的なレコード管理機能およびプロパティーを提供します。
IBM Enterprise
Records の Base インストールは IBM Enterprise
Records の最も一般的なインストールです。このインストールでは最小限の数のプロパティーが追加され、ほとんどのニーズに合致します。 機能的には、Base インストールは、DoD インストールと同じ機能を提供します。
- DoD ベースライン: 米国国防総省 (DoD) 5015.2 ベースライン規格を満たします。この規格は、DoD 内のレコードの管理に関する実装および処理手順を提供します。 また、IBM Enterprise
Records の DoD インストールは、特定のシステム・インターフェースと検索条件を定義します。 DoD インストールは、現在の米国国立公文書館 (NARA) の規則に基づいて満たす必要がある最低限のレコード管理要件も示します。
- DoD 機密扱い: 米国国防総省 (DoD) 5015.2 ベースライン規格を満たし、DoD 規格にある、機密ドキュメントに対するオプションの要件に応じて機密レコードを処理するためのサポートが追加されます。
IBM Enterprise
Records エンティティーのタイプ
IBM Enterprise
Records では、レコードはさまざまなレコード管理エンティティーを含む階層構造に格納されます。 次の図に、これらのエンティティーの階層構造と、各エンティティーについての簡単な説明を示します。

- オブジェクト・ストア: オブジェクトのリポジトリー、および付随する一連のオブジェクト格納サービス、検索サービスです。 オブジェクト・ストアには以下のものがあります。
- ファイル・プラン・オブジェクト・ストア (FPOS): ファイル・プラン、つまり作成するレコード管理エンティティーの階層全体が含まれます。
- レコード対応オブジェクト・ストア (ROS): FPOS でレコードとして宣言できるドキュメントが含まれます。
レコード (メタデータ) 用のオブジェクト・ストアとレコードとして宣言されるドキュメント用のオブジェクト・ストアを別個に構成することをお勧めします。 このようにすると、FPOS にはファイル・プラン構造が含まれ、ROS にはレコードとして宣言されるドキュメントが含まれます。 通常、ROS にアクセスするユーザーは多く存在しますが、FPOS のファイル・プランを構成するエンティティーにアクセスするユーザーは多くありません。 1 つの FPOS に複数の ROS を関連付けることができます。
- ファイル・プラン: レコードの編成を定義します。 ファイル・プランでは、レコードのコンテキストを保持するために構造化された階層にレコードを格納します。 例えば、組織のビジネス機能を反映したファイル・プランを作成できます。 次に、これらのビジネス機能に基づいたスキームにしたがってレコードを分類します。 また、ファイル・プランに命名パターンを関連付けることができます。 ファイル・プランに従って作成されたすべてのエンティティーは、レコードの命名パターンに準拠します。
- レコード・カテゴリー: ファイル・プランに含まれる関連レコード・セットを分類します。 レコード・カテゴリーは、機能カテゴリーに基づいてレコードを分類するために作成します。 レコード・カテゴリーには、サブカテゴリーまたはレコード・フォルダー、いずれか一方が含まれる場合があります。また、各カテゴリーに保存期間と廃棄のルールを関連付けることもできます。 これらのルールは、そのカテゴリーの中に作成されるすべてのレコード・フォルダーとレコードに適用されます。
- レコード・フォルダー: 関連レコードのコンテナーとして機能します。 指定された保存期間と廃棄イベントに従ってレコードを管理するために使用します。 カテゴリーの下に電子、物理、およびハイブリッド・レコード・フォルダーを作成して電子および物理レコードを管理できます。
- 電子フォルダー: 電子レコードを格納するために使用します。 電子フォルダーには、マーカーも格納できます。 マーカーは、物理ファイルに格納できない物理レコード用の電子エントリーです。 このようなレコードには、建築図面、ビデオ・テープ、データベースなどがあります。
- 物理フォルダー: 紙のレコードなどの物理アイテム用のレコードを格納します。 物理フォルダーは、紙のフォルダーの仮想エントリーです。
企業や組織における、物理的な格納構造に基づき、IBM Enterprise
Records でも物理フォルダーの階層をモデル化できます。
- ボックス: ボックスは、他の物理エンティティーを含む物理エンティティーをモデル化するためのメカニズムです。 例えば、「ウェアハウス」を作成し、その中に「シェルフ」、その中に「ボックス」、その中に「物理フォルダー」と作成できます。 ボックスには、別のボックス、物理フォルダー、またはレコードを格納できます。
- ハイブリッド・フォルダー: 関連する電子および物理レコードの集まりです。
- ボリューム: レコード・フォルダーを小さくて管理しやすい単位に論理的に分割するために使用します。 ボリュームは、フォルダーから独立して存在できません。 レコード・フォルダーには、レコード・フォルダーの作成時、システムによって自動的に作成されたボリュームが、常に 1 つ以上含まれます。 その後、レコード・フォルダーに任意の数のボリュームを作成できます。
- レコード: レコードは、IBM Enterprise
Records アプリケーションの管理下に置かれるドキュメントまたは物理オブジェクトに関するメタデータです。 レコードは、作成元のレコード・フォルダーから動作の一部を継承できます。 例えば、親レコード・フォルダーに設定された廃棄スケジュールを継承できます。 レコードは、以下のタイプに分類できます。
- 電子レコード: 電子ドキュメントを指します。
- マーカー: 物理オブジェクトまたは紙のドキュメントを指します。
- 重要レコード: 全社レベルの緊急時に業務責任を果たすために必要不可欠なレコードです。
重要レコードは定期的にレビューおよび更新されます。
- パーマネント・レコード: 継続して保存するだけの歴史的またはその他の価値があると見なされたレコードです。 管理上、法律上、または会計上の目的で通常必要な期間を越えて保存します。
- レコード・タイプ: 共通の機能を持つレコードにレコード・タイプを関連付けることができます。 例えば、レコード・タイプを定義して、レコードに共通の廃棄スケジュールを指定し、レコードの検索や取得を支援できます。 レコード・タイプは、レコード・フォルダーに現在関連付けられている廃棄スケジュールとは異なるスケジュールをそのレコード・フォルダー内のレコード・グループに割り当てるときに使用します。
次のエントリーに、レコード管理エンティティーの階層の例を示します。
ファイル・プラン
マネジメント全般 (カテゴリー)
書簡ファイル (フォルダー)
プログラムの概要説明 (フォルダー)
2006 マネジメント・トレーニング・コンファレンス (ボリューム)
2007 マネジメント・トレーニング・コンファレンス (ボリューム)
情報マネジメント (カテゴリー)
書簡ファイル (フォルダー)
オペレーター番号シート (フォルダー)