このセクションでは、以下のハードウェア環境についての概要を説明します。
容量および拡張容易性は、それぞれの環境ごとに説明されます。 容量 とは、 データベースをアクセスできるユーザーおよびアプリケーションの数のことです。 その大部分は、メモリー、エージェント、ロック、入出力、および記憶管理によって決まります。 拡張容易性 とは、データベースが拡張されても、 同じ操作特性と応答時間を示し続ける能力のことです。
この環境は、メモリーとディスクからなりますが、単一の CPU しか含まれていません (図 25を参照)。 これはスタンドアロン・データベース、クライアント / サーバー・データベース、 シリアル・データベース、単一プロセッサー・システム、および単一ノードまたは非並列環境など、 多くの名前で呼ばれています。
この環境におけるデータベースは、部門または小さなオフィスのニーズを満たすもので、 そこでは、データおよびシステム・リソース (単一プロセッサーまたは CPU を含む) が単一のデータベース・マネージャーによって管理されます。
表 3 に、このハードウェア構成を利用するための最適な並列化のタイプの一覧を示します。
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この環境では、さらにディスクを追加することができます。 各ディスクごとに 1 つ以上の入出力サーバーを持つことによって、 同時に複数の入出力操作を行うことができます。 また、この環境に対してさらにハード・ディスク・スペースを追加することもできます。
単一プロセッサー・システムは、 プロセッサーが処理できるディスク・スペースの量によって制限されます。 しかし、作業負荷が増加すると、メモリーやディスクなどの構成要素にかかわりなく、 単一 CPU ではユーザー要求をそれ以上速く処理することはできなくなる場合があります。 容量または拡張容易性の最大に到達してしまった場合は、 複数プロセッサーを備えた単一区画システムに移行することを検討することができます。
この環境は通常、同じマシン内の複数の等価の処理能力を持つプロセッサーからなり (図 26 を参照)、 対称マルチプロセッサー (SMP) システムと呼ばれます。 ディスク・スペースおよびメモリーなどのリソースは、共用 されます。
複数のプロセッサーが使用可能なので、異なるデータベースの操作を、 より速く完了させることができます。 また DB2 では、処理スピードを向上させるために、単一の照会の作業を、 使用可能な複数のプロセッサーに分割することもできます。 他のデータベース操作、たとえばデータのロード、表スペースのバックアップおよび復元、および 既存のデータの索引の作成などでも、複数のプロセッサーを利用できます。
表 3 に、このハードウェア構成を利用するための最適な並列化のタイプの一覧を示します。
図 26. 単一区画データベースの対称マルチプロセッサー・システム
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この環境では、さらにプロセッサーを追加することができます。 ただし、異なるプロセッサーが同じデータのアクセスを試みる可能性があるため、 業務の操作が拡大するにつれて、この環境の制約が現れてくる可能性があります。 共用メモリーと共用ディスクを使用すれば、 すべてのデータベース・データを効率的に共用することができます。
ディスクの数を増やすことにより、プロセッサーに関連するデータベース区画の入出力容量を増やすことができます。 特に入出力要求を処理するために、入出力サーバーを設定することができます。 各ディスクごとに 1 つ以上の入出力サーバーを持つことによって、 同時に複数の入出力操作を行うことができます。
容量または拡張容易性の最大に到達してしまった場合は、複数区画を備えた システムに移行することを検討することができます。
1 つのデータベースを複数の区画に分割して、 それぞれの区画が独自のマシン上にあるようにすることができます。 複数データベース区画を備えた複数マシンを一緒にグループ化することができます。 このセクションでは、以下の区画構成について説明します。
この環境では、多くのデータベース区画があります。 それぞれの区画は独自のマシン上に常駐しており、 独自のプロセッサー、メモリー、およびディスクを持っています (図 27)。 すべてのマシンは通信機能によって接続されています。 この環境は、 クラスター、単一プロセッサー・クラスター、最大印刷位置 (MPP) 環境、 および共用なし構成などの多くの名前で呼ばれています。 後の方の名前は、この環境におけるリソースの配置を反映したものです。 SMP 環境と異なり、MPP 環境には共用のメモリーまたはディスクはありません。 MPP 環境は、メモリーおよびディスクの共用によって発生する制約を除去します。
区分データベース環境によって、データベースは、物理的には複数の区画に分割されていても、 1 つの完全な論理的なものとして扱えます。 データが区分化されているという事実をほとんどのユーザーは認識する必要がありません。 作業は、データベース・マネージャー間で分割できます。 各区画のそれぞれのデータベース・マネージャーは、 自分の分担する部分のデータベースに対して作業を行います。
表 3 に、このハードウェア構成を利用するための最適な並列化のタイプの一覧を示します。
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この環境では、さらにデータベース区画 (ノード) を構成に追加することができます。 一部のプラットフォーム (たとえば RS/6000 SP) では、最大は 512 ノードです。 ただし、多数のマシンとインスタンスを管理することに関して実行上の制限 がある場合があります。
容量または拡張容易性の最大に到達してしまった場合は、 各区画が複数のプロセッサーを備えたシステムに移行することを検討することができます。
各区画が単一プロセッサーを持つ構成に対する代替の構成は、 1 つの区画が複数のプロセッサーを持つ構成です。 これは、SMP クラスター と呼ばれます(図 28)。
この構成は、SMP 並列化と MPP 並列化の利点を組み合わせたものになります。 これは、1 つの照会を複数プロセッサーにわたって単一区画で実行できるこ とを意味します。 また、1 つの照会を複数区画にわたって並列に実行できることも意味します。
表 3 に、このハードウェア構成を利用するための最適な並列化のタイプの一覧を示します。
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この環境では、さらにデータベース区画を追加したり、 既存のデータベース区画にさらにプロセッサーを追加したりすることができます。
論理データベース区画は、マシン全体の制御権が与えられていないところが物理区画と異なります。 マシンは共用リソースを持っていますが、データベース区画はリソースを共用しません。 プロセッサーは共用されますが、ディスクとメモリーは共用されません。
論理データベース区画は拡張容易性を提供します。 複数の論理区画で実行している複数のデータベース・マネージャーは、 単一のデータベース・マネージャーが可能なよりも完全に、 使用可能なリソースを利用することができる場合があります。 図 29 は、特に多くのプロセッサーを備えたマシンについて、 さらに区画を追加することによって、 SMP マシン上でさらに拡張容易性を獲得できることを示したものです。 データベースを区分化することによって、 それぞれの区画を個別に管理および回復することができます。
図 29. 区分データベース、対称マルチプロセッサー・システム
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図 30 は、処理能力を高めるために、 図 29 に示された構成を増やすことができることを示したものです。
図 30. 区分データベース、一緒にクラスター化された対称マルチプロセッサー・システム
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表 3 に、 このハードウェア環境を利用するための最適な並列化のタイプの一覧を示します。
注: | また、2 つ以上の区画を、(プロセッサーの数には無関係に) 同じマシン上に共存させる機能によって、 高可用性構成とダウン対策を設計する上でより大きい柔軟性が得られます。 機械故障の際に、 同じデータベースの別の区画がすでに含まれている 2 番目のマシンに自動的にデータベース区画を移動して再始動できます。 詳細については、第 11 章, 高可用性の設計を参照してください。 |
以下の表は、さまざまなハードウェア環境を活用するのに最適な並列化のタイプをまとめたものです。
表 3. それぞれのハードウェア環境ごとの可能な並列化のタイプ
ハードウェア環境 | 入出力並列化 | 照会内並列化 | |||
---|---|---|---|---|---|
区画内並行化 | 区画間並行化 | ||||
単一区画、シングル・プロセッサー | 可 | 不可(1) | 不可 | ||
単一区画、複数プロセッサー (SMP) | 可 | 可 | 不可 | ||
複数区画、1 プロセッサー (MPP) | 可 | 不可(1) | 可 | ||
複数区画、複数プロセッサー (SMP のクラスター) | 可 | 可 | 可 | ||
論理データベース区画 | 可 | 可 | 可 | ||
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